さよならの先(志村季世恵)

 

 

さよならの先 (講談社文庫)

さよならの先 (講談社文庫)

 

 

 

ダイアログ・イン・ザ・ダークというイベントを開いていることで有名な方の本。全盲の患者の世界を体験するというダイアログ・イン・ザ・ダークの活動の話は最終章で少し紹介されるくらいで、本書はセラピストとしての活動の中で終末期の患者とどのように向き合ってきたのかという話。

志村さんはもともと旦那さんと二人で薬局の仕事とセラピストとしての活動をしてきたという。旦那さんとが2007年に急逝されたその前後の頃にセラピストとして出会った何人かの終末期の方々の話が紹介される。

 

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多くは比較的若い段階でがんに罹患、治療を行う中病状は悪くなり、生への絶望に苦しむ中で志村さんをしり、助けをもとめて知り合っている。自閉症の子供が社会へ出ることへの支援などもされていたようだ。医療を提供するという活動の中で医師ができることの中で中心にあるのは疾患の治療であると思う。しかし、現代の医療はそれだけでは完結しない。志村さんのような精神面のケアをする方は医療現場に欠かせないものになっており、診断の衝撃や、治療への不安、うまくいかない時の心のケアに大きな役割を持つ。

治らない病気や、がんの末期になった時にどうやってその事実を受け入れていくのかというのは人により本当に異なっている。自閉症の子供には時間をかけて両親が受け入れられるようにして、子供はその能力の範囲の中で生きる道を見つけてもらう。がんの末期の方々には必要な支援がなんなのか、それぞれ個別に考えて支援をする。その人の生活の中に出会ったばかりのセラピストが入り込んで全人的な支援を行うというのは「これが本当に仕事になるの!?」というようなものも多い。ほぼ自発的な優しさからこういった支援をされているのだと思った。実際の医療現場や患者の中にも家族がいない人や身寄りがない人は多く、そういった人が最期を迎えるにあたり、非常に不幸な気持ちのまま過ごすということが多いように思う。人の関わりとか生きがいとか、そういった事は医療行為として値段に算定できないものではあるけれど患者にとっては金銭に変えられない大きな価値になるものなのだと思う。

筆者は一人一人に寄り添い、その時にどう考えたか、ということをありありと描くが、一般論を語る事は少ない。身近な人が終末期を迎えた時、本書の読者が本書のことを心の片隅い思い出しその時毎に優しく手をそえてあげられるようになれば、と思う。