ワーク・シフト (リンダ・グラットン)

 

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

 

 

 向こう数十年の世界を形作る5つの要因

・テクノロジーの進化
グローバル化の進展
・人口構成の変化と長寿化
・社会の変化
・エネルギー・環境問題の深刻化

 産業革命の世界でも、テクノロジーの進化に続いてエネルギーの進化が起きることで社会が劇的に変化していった。現在の私達の世界で起こりつつあるテクノロジーの変化の最たるものが今後50億人が世界中でインターネットで繋がる社会が実現されることだろう。インターネットで繋がる世界のグローバル化、また、人口の都市へのシフトの結果、都市の内部には高度な教育を受けたエリート層と、貧困層が共存するようになる。グローバル化第二次世界大戦の後から進んだ現象で、年代層が下るにつれて20世紀の後半に起きた劇的な技術的進歩がより生活に馴染んだものになった。1990年代後半に生まれた世代は物心がついた頃からインターネットにつながれた世界で過ごし、SNSがごく当たり前の社会で暮らしている。しかし人口は若年層以外のベビーブーマーの世代が最も多く、先進国では21世紀中盤になると高齢者が人口の多くを占めるようになる。イタリアのように(日本も同様だろうが)高齢化が進む地域では、年金支給開始年齢を引き上げるか多くの移民を受け入れるしか解決策がなくなるかもしれない。エネルギーの問題も全くまだ解決されていない。エネルギーをどこから拠出するのか、環境問題をどのようにしてクリアするのか?場当たり的な政策ではなく、着実に技術を進歩させることが非常に重要である。

 
本書では予想される未来にもとづいて6パターンの生活スタイルが例証される。
 
◯ 働き方の未来と取るべきシフトの内容
インターネットが全ての場所を繋ぎ、ワークスタイルは激変する。家、リモートな職場を駆使して朝から寝るまで世界中とつながり仕事をする生活。時間は細切れになり、絶え間なく降り注ぐ仕事をこなす毎日。筆者は警鐘を鳴らし、常に何かに追われることで腰を落ち着けて物事に取り組むことができなくなることを心配している。
 
“私たちは仕事の世界で「気づかないうちに積み重なる既成事実」に慣らされてはいないか”
 
“時間に追われるあまり、価値ある技術や能力に磨きをかける機会をなくしている”

 

この未来からの脱却のためには次の3つが必要だと説く。
・専門技能の習熟に土台を置くキャリアを意識的に築く
・せわしなく時間に追われる生活を脱却しても必ずしも孤独を味わうわけではないと理解すること
・消費をひたすら追求する人生を脱却し、情熱的に何かを生み出す人生に転換すること

 

また、インターネットによるつながりの裏で、実際に職場で顔を付き合わせる事が少なくなり、孤独が広がるかもしれない。そうした未来を切り開くためには3つのタイプの人的ネットワークを構築する必要がある、
 
・「ポッセ(同じ志をもつ仲間)」。いざというときに頼りになり、長期に渡って互恵的な関係を築ける少人数のグループ
・「ビッグアイデアクラウド(大きなアイデアの源となる群衆)」多様性に富んだ大人数のネットワーク
・「自己再生のコミュニティ」。頻繁に会い、一緒に笑い、食事をともにすることにより、リラックスし、リフレッシュできる人たち

 

 
◯ 働き方
私は米国で言うY世代(1980年代〜1990年代生まれ)に相当する。自分がそうであるように、Y世代は”仕事でとりわけ重きを置く要素は、学習と成長の機会を得られること"であるようだ。この世代は今後ワークライフバランスを重んじるようになる。そして自由を求め、創造性を発揮することが大事にされる。先に触れた付き合うべき人々が重要になる。本書で触れた好ましい未来において活躍する人々はインターネットを駆使してゴリゴリ働く人々よりはむしろ喜びのために働く人々だ。自分がやりたいことのために社会貢献をすること、自分の才能・趣味を手工業のように小規模事業者として社会に出していくこと、人々のつながりをうまく利用してプロジェクトを想像していく人が紹介される。こうしたことができるようになるためには以下が求められる。 
“今必要とされているのは、昔の職人のように自分の専門分野の技能と知識を深める一方で、他の人達の高度な専門技能と知識を活かすために人的ネットワークを築き上げることだ。”
“そのうえ、リスクを回避するために複数の専門分野に習熟しなくてはならない。一言で言えば、連続スペシャリストになることが不可欠なのである。”
“技能や能力が高い価値を持つためには、他の人にまねされにくいものである必要がある。”

 

こうした模倣されにくい専門技能として、生命科学・健康関連、再生可能エネルギー関連、創造性・イノベーション関連、コーチング・ケア関連が挙げられている。専門性を磨いた上でポッセやビッグアイデアクラウドの人々と協力して専門の集中と多様性を活かした仕事を勧めていくことが今後の創造的な仕事を生み出していく。
 
働き方や仕事で生み出す価値に対する考え方は世代によってもかなり異なっているようにも思う。長期に渡って続く組織のトップの多くは「一所懸命」といった働き方で組織を支えた人が多い一方で、30代・40代のリーダーの中にはマルチな才能を活かして活躍する人も多い。Y世代、Z世代の多くが社会でリーダーとなるのはこれからの2020年代・2030年代になる。そう遠くない未来で活躍するためには時代が求めるものやテクノロジーを知り、多くの選択肢の中から限られた時間で自分の生き方をデザインする考え方が重要になるように思った。