世界のトップエリートが実践する集中力の鍛え方(荻野淳也ら)

GOOGLEを始めとした一流の組織は社内の研修で積極的にマインドフルネスの実践を取り入れている。仕事をする傍らで次々に送られるメールに対応しなくてはならないような現代の働き方ではマルチタスクが当たり前になっている。しかし忙しい一方で実はマルチタスクは仕事の効率性を落とす働き方なのである。ともすれば自動運転の様になりがちな忙しい生活の中で洞察力を働かせるために立ち止まって考えることが結果を出すことにつながる。一つの事に集中することが重要で、マインドフルネスの実践によりそれは鍛えることができる。マインドフルネスとは「意図的に、今この瞬間に、評価と判断とは無縁の形で注意を払うことから、浮かんでくる意識」のことである。眼の前にいる相手にしっかりと注意を向ける能力、習慣につながるものである。いまにフルに注力することで複雑でま苦しく変化するビジネスの荒波を、的確な判断のもとで乗り越えることができる。
 
現代はVUCAワールドと呼ばれており、変動の幅が大きく(Volatility)、不確実で(Uncertainity)、複雑で(Complexity)、問題の所在がどこなのかさえ曖昧(Ambiguity)である。このような世界でただ立ち尽くすだけではだめで、しかもコントロールできない不安定な世界を前向きに受け入れ、疲弊しても速やかに立ち直る力(すなわち、レジリエンス)を身につけることが重要。ルールがどんどんかわるような世界、矛盾をはらんだ世界でもそれを受け入れながら、なおかつ前進し続ける人物がこれからの世界で活躍していく。パフォーマンス重視の考え方か、メンテナンス重視の考え方か、という視点で組織を見るPM理論というものがある。パフォーマンス重視であれば短期的に成果を出すことはできるだろうが、中長期的にはメンテナンス重視の方が成果がでてくる。
 
また、リーダーシップにはセルフアウェアネスが重要だと言われている。これは自分の内側にあるものに意識を向けることであるが、同時に相手に関心を持ち、共感することが必須である。ポジティビティの高い状態にあれば、穏やかに持続する快適な心理状態を手に入れることができる。マインドフルなリーダーとは「深い洞察力と自己認識を持つ」、「無知の知(知らない、ということを知っている)」を受け入れる謙虚さと好奇心を持つ」「自己の価値観と外部(組織、社会)に向けて果たすべきことを統合する」、「強い信念と軽やかさをあわせもつ」、「ビジョナリーで天命に生きるが、固執しない」ような人のことを指す。
 
マインドフルネスの実行により、脳の活動性にも変化が出てくることが報告されている。瞑想の経験を積むことで、幸福感がましてくる。しかも、この能力は特別な才能を持った人にのみ身につくものではなく、誰もが訓練・習慣化することで身につけることができる。
 
本書の後半はマインドフルネスの実行の仕方について紹介されている。自分の呼吸にまず意識を向けること、意識が離れたと思ったらそれを認識して意識を再度戻していくこと、などのプロセスが紹介されている。本を読むだけではしょうがないので実際にやって習慣化してみることで本書を読む目的が達成されるのではないだろうか。他にもクイック・ボディスキャン、マインドフル・ウォーキング、マインドフル・イーティング、ラベリングなどの手法が紹介されている上、通勤や、職場、休憩時、退社時、帰宅、酒席などでの実践やマインドフルなコミュニケーションのあり方についても紹介されている。重要なのは今この瞬間に集中を向けることなのである。
 
マインドフルネスの概念から実行まで簡潔に書かれた入門書。実践の部分が丁寧で、少し実行してみようと思った。様々なシチュエーションでのマインドフルネスについては少し眉唾な印象。スタンフォード大学、マインドフルネス教室は理論だったことはわかりやすかったがいまいち実践に移しにくいと感じたので、そういった意味ではこちらのほうがわかりやすい。