医療機器開発とベンチャーキャピタル(大下創,池野文昭)

 

医療機器開発とベンチャーキャピタル (経営者新書)

医療機器開発とベンチャーキャピタル (経営者新書)

 

 

 

医療機器開発のベンチャー企業に投資をしてきた筆者が自らの経験を通して「ベンチャーとは何か?」「ベンチャー企業のステージ」「医療ベンチャーが考えるべきこと」「ベンチャー企業の戦略」を語る。新書でスッキリと読める。

 

まず、ベンチャー企業は中小企業の事をさすのではない。ベンチャー企業は明確なexitを目指し短期間でIPOM&Aを目指すスタートアップ企業である。そしてベンチャーキャピタルはそのベンチャーを金銭面・経営的ノウハウで手助けをするファンド、といった理解をした。

 

ベンチャー企業の段階は、シード(seed)、アーリー(early)、ミドル(middle)、レイト(late)にわけられる。exitまでの期間は3〜5年と短く、大企業ではできないような迅速な判断、行動が求められる。だからこそ、イノベーションを起こすことが可能である。IPOは景気により左右されることが多い一方でM&Aでのexitは大企業が安定している限り需要はある。もちろん、失敗するリスクもあるため、「何を」するのか、といった事前調査は非常に重要である。人々のニーズはあるのか?マーケットの規模はどの程度か?といったことである。医師は医療業界において、ニーズを把握する事においては有利である。医療機器が実際に承認されるまでには、非臨床試験、人体での試験を経てから販売に至る。販売のプロセスは大手に任せることも多い。この過程で安全性といった面は重要であり、どこの国で試験を行うか?どこの期間から承認を通していくか、といった戦略も考える必要がある。多くのプロセスではより早く承認が通るようにヨーロッパ→米国→日本といった順で承認を通していく。

 

シリコンバレーミネアポリスといった都市では医療系のスタートアップが多い。これは周辺環境が整っているからで、大病院、大学、ベンチャーを育む環境が整っているからだ。大企業は製品開発を直接行うのではなく、ベンチャーと協力してビジネスを進めるようになっている。

 

ベンチャーが成長していく過程でベンチャーキャピタルから融資を募るラウンドを何回か繰り返す。株価の設定によりベンチャーの創業者とベンチャーキャピタルの最終的な取り分は変化していくものであるのでその過程・規模は慎重に行われることが多い。とはいえ、ベンチャーキャピタルはイメージとして抱かれるハゲタカのようなものではなく、共に働き、苦境を乗り越えることにより信頼関係を築く性格もある。ベンチャーが目指す製品は市場を一気に塗り替えるゲームチェンジャーであるべきである。開発が大規模すぎず、ある程度予想がつくものが良い。しかし、アイディア・技術だけでは不十分。実現性や使用者としての第三者が受け入れられるかといった要素も重要である。そこにVCが参加する、また、優秀な人材を適切な時期に確保することが重要である。製品に関してはニーズや市場規模が大事であり、最大の規模が数十億程度では不十分である。その条件が揃った目標にフォーカスを絞って短期間で邁進していく。臨床現場から課題を広い、その解決策を探していく。その過程でブレインストーミング→アイディアの選別→課題発見型イノベーションという段階を経ていく。近年は医療機器開発の教科書としてBiodesignという書籍があり、様々な教育機関で使われるようになっている。