チャーチル・ファクター(ボリス・ジョンソン)

 

 

第1章◆ヒトラーと断固として交渉せず
第2章◆もしチャーチルがいなかったら
第3章◆裏切り者のいかさま師
第4章◆毒父、ランドルフ
第5章◆命知らずの恥知らず
第6章◆ノーベル文学賞を受賞した文才
第7章◆演説の名手は一日にして成らず
第8章◆尊大にして寛大
第9章◆妻クレメンティーン
第10章◆代表的英国人
第11章◆時代を先取りした政治家
第12章◆報復にはノー、毒ガスにはイエス
第13章◆戦車の発明者
第14章◆超人的エネルギー
第15章◆「歴史的失敗」のリスト
第16章◆同盟国フランスの艦隊を撃沈
第17章◆アメリカを口説き落とす
第18章◆縮みゆく大英帝国の巨人
第19章◆鉄のカーテン
第20章◆ヨーロッパ合衆国構想
第21章◆「中東問題」の起源
第22章◆一〇〇万ドルの絵
第23章◆チャーチル・ファクター
 
2016年のイギリスのBrexitに関する国民投票の時にも一躍有名になった、イギリスの政治家ボリスジョンソン氏が書いた、チャーチルの本。
 

第二次世界大戦時のイギリス首相、ウィンストン・チャーチル

1940年、ナチスがヨーロッパ全土の制覇を狙い破竹の勢いでヨーロッパの国々を破っていた中、チャーチルは首相として任命された。チャーチルは断固としてナチスドイツと戦うことを決意し、議会、そして国民に呼びかけた。チャーチルの演説は非常に上手く書かれていた。別の言い方をすれば、チャーチルの演説はその愛国心から、熱意からその場で紡ぎ出されたようなものではない。用意周到に予め言葉を選び作られたものが人々の前で発言されていた。1900年から議会で活躍をする中で、様々な失敗はあったものの、首相になるまでに数々の政府のポストに任命され、職務を全うしてきた。必ずしもその評判が高かったわけではないものの、それまでの間に数々の戦争で実際に現地に赴いたりして戦ったことがある首相として、チャーチルは戦時の首相には非常にフィットしていた。強い愛国心で戦争の時代のイギリスを率いた。
 

政治家以外にも多彩な人物

政治家としてのチャーチルが日本で最も有名な姿だと思われる。山高帽をかぶり、葉巻を口にくわえ、人々に手を振った姿が私にとっても一番印象的だ。しかしチャーチルの才能はそれのみにはとどまっていなかった。もともとイギリス史において戦争で活躍したという先祖を持ち、貴族の家庭に生まれたチャーチルであったが、必ずしも幸せな家庭に生まれたとは言えない。親との会話などもほとんどなかった。父親は政治家として活躍していた。若き日のチャーチルが多忙な父親に認められたことはほとんどなかったという。政治家として大成していく前のチャーチルのキャリアはジャーナリストであった。戦地に実際に赴いて書いた記事を寄稿していた。記事の質は高く、売れっ子のジャーナリストとして大きな額を稼いでいた。政治家になっても物書きは続けていた。といっても書くスタイルは非常に贅沢なもので口述を秘書に書きとらせるといったことを毎晩毎晩行なっていた。生涯でチャーチルが著した書籍は31冊にも及ぶという。それにくわえて様々な記事や議会の演説、財務相の時には膨大な予算案の作成など、チャーチルのエネルギーはとどまることを知らなかった。文学の方面では何とノーベル文学賞までも受賞している。また、チャーチルは絵画も趣味として、生涯で数百もの絵画を残している。
 

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著者、ボリス・ジョンソンの意図

チャーチルの伝記として、非常に細かい取材を繰り返して書いた本であることがうかがわれる。ボリスジョンソンはチャーチルが大好きなのか、各章の記述においてチャーチルを擁護するような記述がよく目立つ。イギリスの近年の政治、というかヨーロッパの近年の政治でも特徴的ではあるがナショナリズムの台頭の雰囲気を本書からはどうしても感じてしまう。それはボリス・ジョンソンがジャーナリストであると同時に政治家であることに起因していると思われるが、様々な事例の解釈が非常にイギリスよりである。というかイギリス人がイギリス人の英雄を称えるために書いた本なので当たり前なのかもしれないが、解釈に政治的な意図をどうしても感じてしまう。強いイギリス、大英帝国のリーダーであったイギリス、英国人としてのアイデンティティ、イギリス人が生み出した様々な発明のことなどが讃えられる。さらに本書で度々触れられる同性愛者や女性参政権についての話であったり、後半には共産主義について、EUについて、そのなかでイギリスがどういった立場をとっていくかについてはどうしても著者の意見が透けて見えてしまうものなのだろう。ナショナリスティックな意見を客観的に受け止めるつもりで本書を読むと、批判的な意見も肯定的な意見も第三者的な解釈ができるようになり、イギリス人からみたチャーチル像が浮かんでくる。
 

グルテン摂取と心筋梗塞の関係

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グルテンフリー食は本当に万人の健康によいのか?

 

試験的に読書以外で気になる読み物の話なども書いてみようと思います。今回はグルテンフリー食の話。イギリスの医学雑誌BMJで発表された「グルテン摂取と冠動脈疾患は長期的にみて関連があるのか?」という疑問について答える研究を紹介します[1]。
 

グルテンとセリアック病

グルテンは、小麦を始め、大麦やライ麦などの穀物に含まれるタンパク質の一種[2]。巷ではグルテンフリー食が体に良いとされ、グルテンフリー食が流行り始めています。
グルテンフリー食が良い、というのはもともとは欧米の白人はセリアック病(Celiac disease, グルテン不耐症)という疾患が多かった(0.7%程度と報告されている)ことから始まります。
セリアック病をもつ人はグルテンに対して過敏な反応を示し、グルテンが含まれる食事で体調が悪くなっていました。そこでグルテンフリー食がそういった方の食生活の解決策として勧められるようになっています。
 
日本ではセリアック病は欧米程は多くないと言われています。セリアック病は内視鏡の検査とグルテンフリー食で症状が改善することを確認することで診断ができます[3]。また、グルテンに関連した免疫の異常が原因と言われており、抗体を血液検査で見つけることでも診断ができるのではないかと言われています。
しかし、セリアック病と言えないグルテン不耐症の存在も指摘されており、日本にも潜在的にそういった方がいると推定されているようです[4]。
 
そんな背景があるなか、巷では『そもそもグルテン自体が体に悪い』という説があふれており、グルテンフリー食をグルテン不耐症以外の人にも進める動きが見られるようになりました。
 

グルテンと冠動脈疾患

“体調が悪くなる”のと”冠動脈疾患”は直接的には関係はありませんが、セリアック病の方ではグルテン摂取を続けると体の炎症が持ち上がり、長期的には動脈硬化が進み心筋梗塞などの冠動脈疾患が増えることが知られています。それが一般の人口にも当てはまるのか?ということを検証した研究です。
 
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グルテンは冠動脈疾患の発症は無かった。むしろ体に良い全粒粉の摂取が減ることでグルテンフリーの方が心筋梗塞のリスクになる可能性
研究はなんと1986年の頃からアンケート形式で調査が始まり、アンケート内容から食事内容・グルテンの摂取量を計算したものです。アンケートの対象は合計11万人にもおよび、彼らの食生活の分析と冠動脈疾患発症の関係が報告されました。結果としては、統計学的には意味のある差は心筋梗塞の発症率には見られませんでしたが、傾向としてはグルテン摂取量が多いグループの方がわずかに心筋梗塞の発症率は低いことがわかりました。さらに細かく見たサブ解析の中では、特にグルテン摂取が少ないグループの中に全粉粒摂取が少ないグループがおり、そういった人たちは心筋梗塞の発症率が高いことが分かりました。これまでに行われた調査では全粉粒は冠動脈疾患のリスクを減らすことが報告されています[5]。この結果から、セリアック病を有する訳ではない人々にグルテン摂取を減らすメリットが有るわけではなく、勧められない、という結論が得られました。もっとも、セリアック病でなくグルテンを摂取することで体調が悪くなるような人はグルテンを控えることで体調が良くなるメリットが有るようなのでそういった方はメリットがあるかもしれません。この研究には短期的な体調の変化などは考慮はされていません。
 
最近勧められるグルテンフリー食、長い目で見ると体に良い全粒粉を取らなくなることで心臓の病気の発症につながってしまうのかもしれません。
 

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Abstract
・Objective
長期のグルテン摂取と心血管疾患の関連を見ること。
 
・Design
前向き観察研究
 
・Setting and participants
64714名の女性と45303名の男性。心血管疾患が無いこと。
アンケート形式で行われた。1986年から、4年おきにアップデートされ、2010年まで行われた。
 
・Exposure
グルテンの消費量をアンケートから推定した。
 
・Main outcome measure
心血管疾患(死亡に至る、あるいは死亡に至らない心筋梗塞
 
・Results
26年間のフォローアップで2273931人年の追跡が行われた。
2431名の女性と4098名の男性が冠動脈疾患を発症した。
5分位で最低のグルテン摂取のグループでは352名/100000人年の割合で冠動脈疾患を発症した。
5分位で最高のグルテン摂取グループでは277名/100000人年の割合で冠動脈疾患を発症した。
既知のリスクファクターで調節した場合にグルテン摂取が最も多かったグループでの発症リスク(HR)は0.95(95%CI 0.88-1.02, P= 0.29)であった。
whole grain(全粒粉)の摂取での調節を行った場合、HRは1.00だった。refined grain(精製粉)での調節を行った場合はグルテン摂取は冠動脈疾患を減らす傾向があったHR 0.85 (95%CI 0.77-0.93 P value=0.002)
 
・Conclusion
長期のグルテン摂取は冠動脈疾患のリスクとは関連が見られなかった。
グルテン摂取を避けることは利益をもたらす可能性がある全粒粉を減らすことなり、心血管疾患に繋がる可能性がある。
 
[1] B. Lebwhl, et al. Long term gluten consumption in adults without celiac disease and risk of coronary heart disease: prospective cohort study. BMJ 2017;357:j1892

http://dx.doi.org/10.1136/bmj.j1892

http://www.bmj.com/content/357/bmj.j1892

[2] 製粉振興会  小麦・小麦粉に係る基礎知識

http://www.seifun.or.jp/kisochishiki/tanpakusituguruten.html

[3] 岸昌廣ら. Celiac病. G.I. Research 2015;23:65-69
[4] 渡邉知佳子ら. セリアック病・non-celiac gluten sensitivity 研究の最前線. 分子消化器病 2015; 2: 38-43
[5] Aune D, et al. Whole grain consumption and risk of cardiovascular disease, cancer, and all cause and cause specific mortality: systematic review and dose-response meta-analysis of prospective studies. BMJ. 2016 Jun 14;353:i2716. doi: 10.1136/bmj.i2716. http://www.bmj.com/content/353/bmj.i2716.long

 

 

 

China 2049 (マイケル・ピルズベリー)

 

China 2049

China 2049

 

 

  • 序 章 希望的観測 
  • 第1章 中国の夢
  • 第2章 争う国々
  • 第3章 アプローチしたのは中国
  • 第4章 ミスター・ホワイトとミズ・グリーン
  • 第5章 アメリカという巨大な悪魔
  • 第6章 中国のメッセージポリス
  • 第7章 シャショウジィエン
  • 第8章 資本主義者の欺瞞
  • 第9章 2049年の中国の世界秩序
  • 第10章 威嚇射撃
  • 第11章 戦国としてのアメリカ
 
著者はCIAに長年つとめ、親中派としてアメリカの対中戦略のなかで中国の調査に長く関わってきた人物。ニクソン政権以来アメリカは中国との繋がりを深め、中国を支援する戦略をとってきた。しかし近年になり、中国のGDPは世界2位となり、アメリカに徐々に迫ろうとしている。中国はアメリカに従属しているわけではない。毛沢東共産党政権を立ち上げた1949年以来、それまでの数百年間欧米に握られていた主導権(覇権)を中国の手に取り戻すべく血汗にじむような策略を張り巡らしてきたその成果がそろそろ実現しようとしている。
 
中国の中にもタカ派ハト派がいるが、歴代の中国の共産党総書記はいずれもタカ派的な性格があり、自らの国を弱者として主張しながら強国より支援を呼びながら自国の経済を強化してきた。昔はソ連に、そしれ70年代以降はアメリカに肩入れをするようになった。だからといって中国が民主化されていったわけではない。覇権国の陰で力を蓄える方便にすぎない。中国の共産党は国の実権を握ってから100年に渡る長期的な計画を一貫して続け、覇権国の力を取り戻す計画を進めていった。中国の姿勢が一貫していることは、反体制派、民主主義を信奉する人々が虐殺された事件に対する強固な検閲の体制などからも伺える。この計画は中国古代の戦国時代の各国の戦略から学んだ様々な策を用いた総力戦によって進められた。春秋戦国時代の戦略は中国の指導者が常に用いてきた。欧米各国はそのことについ最近まで全く気づいていなかった。直接的な武力の衝突では勝てないアメリカに対して政治的な力を使ったり、経済力を増すことや、他国に間接的にアメリカの国力を削ぐ努力をさせた。そして2010年代になり総書記となった習近平はその演説の中で「中国の夢」という言葉を多用しついに中国はその野心を世界中にさらけだすようになったのだ。
 
標的の国へ送るスパイ、自国のインターネットに対する強力な検閲、敵の敵を支援するような武器の売買などは総力戦の中で戦略として用いられている。相手の国力を削ぎながら、自らは世界のルールを守らずに世界の組織(WHOや世界銀行)を最大限利用することで最大限の急成長を遂げてきた。日本のGDPを抜き、世界第1位のGDPを持つアメリカを射程圏内にまで追い込んでいるのが2010年代の中国である。まだ軍事力はアメリカには及ばず、軍事への投資は遥かに少ないものの、経済力がアメリカを凌ぐようになった時、軍備拡張を行い世界の派遣をとることを視野にいれている。
 
中国が巧妙に立てた作戦で世界を牛耳ろうとするのを防ぐためにアメリカが(民主主義国陣営が)とるべき戦略についても明確に述べられている。総力戦には総力戦を、ということで中国のことをよく分析した上で対処を行っていくことが強調されている。
 
筆者はアメリカの対中国戦略の中心近くにいた人物であり、そんなに濃厚に中国との付き合いが何十年にも渡ってあるような人物がいまや明らかな中国の戦略に気づかないのは少し信じられないような気もするが、昔のはるかに貧しい中国を見てきたからそうなのだろう。非常に頭が良い方で、しかも綱渡りのような国と国の駆け引きのようなことまで考え、西洋から登用の戦略まで研究してきたからなのか、文章は非常に分析的で説得力がある。また、亡命者たちの証言などもより生々しさを増す。我々の世界で実際に起こりつつある大きな変動を感じさせる重要な本だろう。20世紀をよく知る我々にとってはアメリカこそがナンバーワンという意識が強いがすぐそこまで対抗する勢力は迫ってきている。

「思考軸」をつくれ ― あの人が「瞬時の判断」を誤らない理由(出口治明)

 
ライフネット生命の出口氏の著作。「インプット量を増やして判断力の下地を上げよ」というのが端的なメッセージ。
自称「歴史オタク」の著者が書いただけあり、様々な所に引用のようなものがあるのが印象的。
ライフネット生命金融庁に免許を許可されたときの話なども少しあるが、仕事を冷静にするために必要なのは様々なインプットである、
といった内容が取り上げられられる。
 
多くの本を読み様々な考え方に触れることや、世界各地いろいろな場所を訪ね歩くことなどなどが取り上げられている。
著者は幼少期に学校の図書館の本を読破したらしい(!)、またこれまでに世界各国の1000以上の都市を訪れ、銀座の店を制覇したらしい。
おそらく興味の軸が広く、どんどんと新しいものを取り入れたいのだろう。
 
歴史的な事例に学ぶことや世界各国のことに学ぶことなど、様々な軸を身につけることで判断の材料にする。
人間の判断力はこれまでの自分の経験に基づくものであり、長考することでのメリットが大きいわけではない、だからこそ瞬時の判断力を磨くためにインプットが必要なのだそう。
ダニエル・カーネマン(Thinkig fast and slowの著者)の理論的に言えば直感を司るtype I思考をじっくり考えるtype II思考よりも重視するような人なのだろう。
学問的なことのような検討が必要なことには個人的にはtype II思考のウェイトが思いとは思うが、ビジネスのようなシーンではtype Iは力を発揮するのかもしれない。
 
週に5冊くらいは本をよむということからも本当にインプットの量は多いよう。日本生命に勤めていたときは毎日飲みに行っていたと言うからよっぽど人脈などを大切にする人なのかとおもったら、ビジネスに対する考え方は非常に冷静で合理的な判断を行う人なのだと感じた。大量のインプットがあるから判断も冷静に自分の軸をもとに下せるのだろう。
 
本書にはあまりアウトプットのことは書かれていないが、著作をAmazonで検索すると膨大な数が出てくる。
アウトプット力も相当なもので、あくまで仕事をするため、アウトプットをするためのインプットであることを現実世界で思い知らされる。ただ、もう一つ、本書で印象に残ったのが、何かを得るためには何かを捨てなければならないトレードオフの概念。何でもかんでもできるわけではないらしい。
フットワークとハイパーなアウトプット力はぜひとも見習いたい。
 
◯参考;ダニエル・カーネマン ファスト&スロー
type I思考やtype II思考の考え方を認識することは現実社会の判断の場面においても非常に役に立つ。

 

ファスト&スロー(上) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
 
ファスト&スロー(下) あなたの意思はどのように決まるか? (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
 

 

ウォートンスクール ゲーミフィケーション集中講義(ケビン・ワーバック、ダン・ハンター)

 

ウォートンスクール ゲーミフィケーション集中講義

ウォートンスクール ゲーミフィケーション集中講義

 

 

ゲーミフィケーションは「非ゲーム的文脈でゲーム要素やゲームデザイン技術を用いること」である。ゲームの要素を仕事に取り入れることによってモチベーションを高めてビジネスで高い生産性を生み出したような事例がある。例えば、マイクロソフトは自社のソフトウェアの改善点を見つけるために社内でゲーミフィケーションの技術を用いて成功を収めた。なんでもビジネスにすれば良いわけでもなく、特定のビジネス目的にあわせて、ゲーム要素、ゲームデザイン・技術・非ゲーム的文脈をうまく組み合わせる必要がある。

ゲーム的側面を持ったものは参加者をファンにさせて夢中で参加させるようになる。

◯デザイン

"どのゲ ーム要素をどの部分にどんな形で付与すれば 、全体的なゲ ーミフィケ ーション体験が各要素の合計を上回るようになるか 。これはまさしくゲ ームデザイン技術で問われる部分"

いかにゲーム要素を生かしていくのかがそのデザイナーには問われるところである。実現のためにはゲームデザイナーのように考える必要がある。ゲームとは自発的なものであり、ゲームにはコントロールを得て選択をするプレイヤーが必要となる。コントロールを得ることは満足につながり、プレイヤーは自然に成功を目指すようになる。

ゲーム愛好家とデザイナーは目的が異なっている。

"要するに 、ゲ ーム愛好家は勝とうとするのに対して 、ゲ ームデザイナ ーはプレ ーヤ ーを遊ばせようと試みる 。これは微妙だが 、重要な違いである 。"

プレイヤーの趣向を踏まえつつ目標を達成するためのゴールとして、ぷれいやーに取り組んでもらい、その状態を維持する、という設定が必要になる。

そこで、デザインの目標としては、
・モチベーションを維持させる
・意味のある選択肢を作り、自律性を持たせる
・構造を持ち、アクティビティを測定するアルゴリズムを備える
・対立の可能性に気づき、モチベーションを促す既存の方法をすべての確認する。
という点に気を配る必要がある。ゲーミフィケーションは動機付けのデザインを備えてなくてはならない。

◯動機付け
動機付けにも内的動機付けと外的動機付けがある。

"そのうち最も影響力があるのが 、エドワ ード ・デシやリチャ ード ・ライアンらによる自己決定理論だろう 。人は内発的な積極性を持ち 、成長への強い内発的欲求を持っているが 、それらは外部環境によって支える必要があり 、そうしないと内発的動機づけは阻害される 、と考えるものだ 。行動主義者のアプロ ーチのように 、人は外的な強化策に反応するだけだと仮定するのではなく 、自己決定理論では 、人間が生まれつき持っている成長と幸福への欲求 (ニ ーズ )を開花させる必要性に注目するのである 。自己決定理論が示唆しているのは 、こうしたニ ーズがコンピテンス 、関連性 、自律性の 3つに分かれること"

内的動機付けを促す要素として、コンピテンス、関連性、自律性を備えているものは興味深く、楽しく、夢中になれる。

外的動機付けとしてはやはり、報酬が代表的なものではあるが報酬は必ずしも有効に働くものではなく”モチベーションをすっかり殺いでしまう可能性”を秘めている。これを「Crowding out」という。

◯フィードバック

フィードバックは内的動機付けを高めるのに使われる。ユーザーは自分の成績を知りたがるものでありフィードバックとして与えられた基準に沿って自分の行動を変えるようになる。

"うまくデザインされたフィ ードバックル ープは 、人々を望ましい振る舞いへと後押しするのである 。"

フィードバックの代表的な手法は「PBL」である、すなわち、point, badge, leader boardである。ポイントは記録の手段であったり、価値を認識させ、外的報酬の基準になり、フィードバック、ゲームの進捗、デザイナーへのデータ提供の役割を担う。また、バッジでユーザーのモチベーションが高まり、評価、アクティビティをの記録、グループの目印となる。リーダーボードで成績を公表することでもモチベーションが高められる。

◯実装
ゲーミフィケーションを実装するにあたり、ビジネスの目標、対象とする行動、プレイヤーのセグメンテーション・モデル化、アクティビティのサイクル、楽しさ、適切なツールを活用することを考える必要がある。
また、法律的な問題もでてくる。ゲーミフィケーションにより過度に競争心を駆り立てるようなことをすれば搾取になるかもしれない。ディズ二ーのホテルでは問題になったことがある。

◯今後
ゲーミフィケーションをさまざまな場面で活かすことで素晴らしい成果を上げられた例もたくさんある。教育の場面で上級生下級生間で協力する環境を作ることができたりもする。チームワークや学習の面でも今後ゲーミフィケーションが生かされていくのだろう。

 

 

ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社

 

ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社

ほとんどの社員が17時に帰る10年連続右肩上がりの会社

 

 筆者が初めて働いた会社ではほとんどの社員が終電で帰り長時間労働をする事で売り上げを伸ばしていた。しかし身体的・精神的な負担が非常に大きい環境ではせっかく優秀な人材を捕まえても定着せずにすぐにやめてしまう。特に女性は出産という大きなイベントを迎えるとその後に同じ働き方を続けることはできない。そして筆者も会社を辞めた末に新しく起業する事になるが、新しい会社では長時間労働をやめ、全員早く帰る会社にすることに決めた。新しい会社は化粧品を取り扱う会社で、確かに長時間労働をやめることに成功した。

と、ここまでは何の変哲もないホワイト企業を作っただけのストーリーだが、本書のテーマはホワイト企業万歳ではなくて、短時間の労働でも会社の業績を上げるために時間当たりの生産性をいかに上げるのか、社員のモチベーションをいかにして保っていったのかといったところにある。筆者が社長として悪戦苦闘しつつも様々な課題をクリアしていったシナリオが紹介されている。印象的なのは、別に労働時間が短いホワイト企業にいるからといって幸せなわけではないということ。多くの仕事をする人は仕事にやりがいやチャレンジを求める。いかに筆者が社長として頑張ったとしてもそこに社員とのコミュニケーションが無ければただのワンマン企業となり、その会社のすべての社員のパワーを引き出すことはできないのだろう。また、社員にもちゃんと会社の理念を共有して同じ目標に向かって進んでもらうことが全体として素晴らしい成果を上げるのに貢献する。さまざまな取り組みの内容は「この会社とこの社長とこの社員」だからこうしていったという意味合いが強いためここでは割愛させていただく(会社のウェブサイトに書いてある:http://www.manara.jp/brand/lp/index.html )が、問題が起こるたびに原因をしっかり突き止めて対策を立ててどんどん環境を改善していく努力は賞賛されるべきだろう。売上高の成長や利益率も良いらしい。

最近残業時間が話題になる中、一足先に本書は労働時間をテーマに取り上げたということでこのテーマに興味がある方は読んでみると良いだろう。

外資系金融マンがわが子に教えたい「お金」と「投資」の本当の話(ジョン太郎)

 

 誰もが切っても切れない「お金」に関する本。本書は一応金融の知識が無い子供に授けたい金融の知識の第一歩になるようにまとめられている。とても読みやすく、わかりやすくい。働いていれば勝手に給料が増えて豊かな生活が実現された昔の日本はとっくの昔になくなった。人口・経済の規模の拡大が止まりむしろ斜陽を迎えたこの時代、半世紀前の常識で生活をしていると痛い目に合う。インフレリスクを考えれば銀行に大金を預けているのは全くメリットにならない。お金は卑しいものでもなく必要なものなのだからちゃんと勉強してリスクに備えなくてはならない。自分の後々のことを頭の片隅においた生活や金銭的なプランを立てるのは必要なことだ。すでにたくさん勉強しているような人はあえてこの本を手に取る必要は無いかもしれないが、複式簿記を始めとした会計の本、金融商品についての本、世界経済の本、投資戦略の本、など幾つもの分厚い書籍を読んで専門知識をつけるのは途中で嫌になってしまいそうな人はアンチョコであれ、こういった本を手に取ったらいい。分かり易いが淡々と世にあふれる「濡れ手に粟」のようなアヤシイ記事の誤りを指摘しつつ堅実な内容が書いてある。実際に何の投資商品を買うべきかは書いていない、だからこそいつの時代も通用しそうな基礎知識が身につくような良い本だと思った。