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a big cheeseは「大きなチーズ」ではありません(牧野高吉)

 

 息抜きにさっと読んだ本ですが、いろいろと目からウロコのことも。英語のイディオムと意味、語源がただ並んでいるだけの本なんですが、日本人にはなかなか馴染みのない、直訳では意味不明な言葉がたくさん載っている。ふーん、という風に読み流すにはもったいない内容。海外のドラマや映画でたまに出てきて「何言ってるの??」というのが少なくなるようなイディオムが満載。せっかくなら単語帳でも作ってしっかりと暗記したいと思った。堅苦しくはないので、実用的な英語力をほんの少し向上させられるいいきっかけになりそうな本。

世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方(クリスチャン・ステーディル)

 

世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方

世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方

 

 

デンマークはクリエイティビティにおいて世界の中でも評価されている国であり、561万人という少ない人口ながら国際的にも高い競争力を誇る。
世界一幸福度が高いことなどでも知られる。経済、福祉などにおける先進国である。(このサイトはわかりやすい http://epmk.net/ranking/
GDPも右肩上がりに上昇している(世界経済のネタ帳 より:http://ecodb.net/country/DK/imf_gdp.html)
 
本書はクリエイティビティが高いことで知られるデンマークの人々を中心にインタビュー形式でクリエイティビティの源泉を探る本である。
冒頭より繰り返し強調されることとしてクリエイティビティとは「既存の枠の限界ギリギリのところで考え、活動する能力」ということであった。
 
第一の柱としての既存の枠限界ギリギリの所、ということについて。既存のものを追求するだけではいけないのである。時間と労力をかけるからにはプロダクトは他の人にとって価値があるものでは無くてはならない。枠の全くの外のものは文化からの文脈がなさすぎて受け入れられない可能性もある、その絶妙なバランスが重要らしい。クリステンセンの書いたイノベーションのジレンマを始めとする一連の書籍においてひときわ印象深い「創造的破壊」にもつながる考えである。既存の価値を塗り替えるようなものが"クリエイション”に求められるのだろう。音質技術だけを追い求めたSONYの開発したSACD(super audio CD)は高い機械が必要な割にその高音質は誰の耳にも聞き分けができないレベルだった。世の中の音楽再生機器はiPodのようなそこそこの音質だけれど「可搬性」という価値が勝ったのだ。
 
もう一つの柱としては、クリエイティビティとはイデオロギーではなく、あくまでプロダクトに対して評価されるものだということが重要視されている。どんなに立派な題目や習慣がついていたとしても、プロダクトを生み出さなければそれは何の価値にもならない。むしろ第一の柱は第二の柱の後についてくるものでさえありうると思う。
 
デンマークという舞台で、登場する人々もほとんど知らないような本ではあるが、「クリエイティビティ」というものが「イノベーション」や「リーダーシップ」とも一体のものであるということが実感されたものだ。個人的には少し印象に残ったのが、先日記事をアップした「Originals」という似たようなテーマを扱った書籍にも書いてあった、「素晴らしいものを生み出す人は多作であることが多い」(逆がどうかはわからないものの。)といったことである。本書は「これから始める」人ではなく、「今クリエイティブな活動をしていて、それを高めたい人」に是非おすすめしたい内容だ。以下は読みながらメモしたアブストラクト。ちなみに本書、結構長いのとインタビューだからなのかコアなアイディアに関しては何回も繰り返しでてきて少し冗長な印象はあった。


クリエイティビティ・・・既存の枠の外で物事を考えるのではなく、既存の枠の限界ギリギリのところで考え、活動することに関わる能力。
クリエイティビティは新たな方法で現実を結びつけて組み合わせ、既存のものの限界にまで踏み出した時に生まれる。既存の枠を外れるギリギリのところへ踏み出すことで達成されるのであり、何もないスペースに飛び出すことで達成されるわけではない。
 
私たちは一般的に自分の能力の限界に到達して初めてまだ試していないことが有ることに気づく。そしてクリエイティブな人は自分が現在持っている能力の限界ギリギリの所で活動する。
 
クリエイティブとは能力ではなく、行動のことを言う。つまり、クリエイティビティは現実世界において表現されて初めて意味をもつ。行動する勇気は決定的要因である。あえて即興的に行動し、世界の探検に足を踏み出すことでもっとクリエイティブになれる。勇気をもつとは、リスクを追うこと、失敗を恐れないこと、自分の過ちを認めることが必要である。
 
想像プロセスにおいては、抑制と解放の間に強い相関関係がある。アイディアを多く出せば出すほど有益なものを見つけるチャンスが増える場合もあれば、抑制や障害は既存のものを越えようとする衝動を生む可能性がある。
 
クリエイティブは既存の枠の限界ギリギリのところで考え行動することであるが、これまでと違うことを行えばクリエイティブになれるわけではなく、他社にとって価値のある者を生み出さなくてはならない。常に頑張ればいいというわけでもなく、日々の仕事の間のわずかの休憩時間も想像プロセスの重要な要素になったりもする。クリエイティビティの基本要素とは「ブレイクスルー、継続的な行動、進んでリスクを負う意志」にある。そして、仕事を愛することが大切だ。充実感を得るために働いている。たいていは分野の大家のもとで経験を積んだ上で、現状を変えたいという欲求が生まれる。クリエイティブな人はエネルギーに満ち溢れ、優れた集中力、認知能力を備える。優れた直感と評価能力、優れた想像力、奇抜なセンス、繊細な感覚を持っている。そして遊びと仕事、外交的と内向的、謙虚と誇り、男女両面、反抗的と従属的、情熱的と客観的といった両面性を備えているのである。
 
クリエイティブな仕事に伴う強力なエネルギーや情熱は心から夢中になれることをすることで生まれる。1998年にハーバードレビューにアマビールが投稿した記事ではクリエイティビティは知識、クリエイティブに考える能力、動機が最適な形で相互作用を起こす時に生まれるとされる。
建築家で、ニューヨークでBIGという会社を立ち上げたビャルケによれば、想像プロセスに欠かせない要素とは、まず活力や欲求、意欲的に取り組む勇気、鍵となる価値基準を探す既知のプロセスを利用する能力、物事を新たな形で組み合わせることが重要である。そして他の人の助けは必須である。
 
クリエイティブな人は既存のものからヒントやアイディアを手に入れる。そしてその価値を増大する。他の人達とは違った角度から考え、行動する。既存のものを新しい形に変身させる。
 
AQUAのソレンによれば、クリエイティビティには退屈から抜け出す衝動が大事である。そして、価値のある者を生み出すためには努力することが必要である。この世に全く新しいものを生み出した人は存在しない。
 
ブレイクスルーを得るクリエイティブなテクニックとはなんだろうか?それは仕事にのめり込みすぎず、休止や中断をつくる決まり事やライフスタイルを持つことだろう。これによりクリエイティビティは指摘される。薬物がこうしたクリエイティビティを刺激するかと言うのには賛否両論がある。ただ、クリエイティブな人には反社会性が高い人が多い。頭は良いが、まともとは思えない壮大な考えを持っている人が多い。自然科学の分野では奇抜な人格は淘汰されるためあまり残らない。
 
クリエイティブな企業文化とは、クリエイティビティの重要性の認識、新たなチャンスを掴み、想像力を発揮すること、新たなアイディアを実現可能な範囲にする。複雑な問題を分析する、明確なビジョンを持った戦略に落とし込む、役に立つアイデア、独創的なアイデア、プロセス中の障害を取り除くこと、個人の能力の違いを理解すること、新たなアイデアや批判を安心して表明できるような居心地のいいクリエイティブな環境にある。そして、新たな課題を設定する勇気や今持っている価値への誇りを持っている必要がある。
 
クリエイティブな作業空間も作業には大事であり、想像プロセスを促し、鋭い感受性を磨くことで、見聞きしたことを記憶に刻みつける能力を高めることができる。
 
本書で繰り返し主張されていることは既存の枠の限界ギリギリのところにクリエイティビティはあるということである。まだ存在しないシナリオに動機づけを加え、創造プロセスを促進する。しかし文脈やプロセス、アイデアが伴う必要があり、非現実的であったり、絵空事のようなシナリオでは行けない。たとえば、従来の犯罪ドラマや刑事ドラマの中でも既存のコンセプトの背後に隠された一連のストーリーがスパイスを効かせたりする。既存の枠のぎりぎりの所を見つけるためには市場にいる他の関係者の観察や周囲に漂う新しいトレンド、傾向をかぎとるのが大事で、すでに利用できるものの組み合わせや古い知識と専門知識とを見直すことで得ることができたりもする。
 
クリエイティビティには勿論情熱、想像力、欲望も必要である。自分の人生を左右するほど興味を惹かれるものに没頭するか、なければ探し続けるのである。
 
ラカンが提唱した3つの段階として、象徴界(記号・数・秩序・法などの人間が人間らしく生きるための規範や理想)、創造界(自己が分裂することで現れる、象徴会と言語を通じて見つけるもの)、現実界(ほかのすべてのものを起源とするもの)があるが、すべての要素がアイディアのひらめきから実現のプロセスのためにチームには必要である。
アナ・ヘアバトはこの3つの段階を認識→知識→機知というように提唱した。
 
リーダーと部下は相互の影響しあうような関係になるべきである。活躍をするためにはPeople, Process, Product, Pressureという4つのPが必要。リーダーは部下に対してフレームワークを設定しなくてはならない。
 
アイディアを爆発させるためには、思考と制約、自由と制限が必要である。多作であることは重要で、失敗してもより多くのアイディアを生むことが素晴らしいものを作り出すことにつながる。
 
クリエイティビティとは違う考え方や革新的な考え方、適切な考え方を含む。フラットな組織、打ち解けた雰囲気、従業員との距離が近く機能するといったことがそれを促進する。そして多様性を確保することも重要である。集中はかならずしもクリエイティビティとは繋がらず、ADHDはクリエイティビティを刺激するかもしれない。
 
学校教育の中でもクリエイティビティは注目され始めている。これまでの教育体制を第1世代、これからの教育を第2世代とした時、教育はクリエイティビティを伸ばすものであるべきだ。クリエイティビティは教育で伸ばすことができるものなのである。
 
私達がすむ不安定な世界では考えるだけではいけない。私たちは自分たちが求める世界の変化の一部とならなくてはならない。そしてクリエイティビティは実現することであり、エネルギーや原動力、情熱がそれを促進する。しかし、既存のものに対する謙虚さも持ち合わせていることが望ましい。

一流の人はなぜそこまで、雑談にこだわるのか?(小川晋平,俣野成敏)

 

一流の人はなぜそこまで、雑談にこだわるのか?

一流の人はなぜそこまで、雑談にこだわるのか?

 

 

「一流の人」や「雑談力」といったキーワードはキャッチーで、とりあえず読んでみるかな、という気にさせるハウツー本。雑談の本だが、オフタイムのビジネストークをどのようにしたらよいか?というのがメインの営業トークの本。

 雑談とは何なのか?高校生が放課後の暇つぶしにする他愛のないその場の時間を過ごすためのものは本書には取り上げられない。本書は「一流の人」になりたい人たちに向けたもの。何かを成し遂げる目的があり、ちょっとした会話もチャンスにつなげるためのコツを紹介するために書かれたものだ。

どんな風に職場の人間に接していくのか、取引先の人と話すのか?ビジネスの目的があるなかでどのように会話をリードしていくのか、といったことが作者の経験則に則って紹介される。リードがうまいなと感心させられるような会話の例が数々挙げられているが、①目的意識がはっきりしている、②相手の状況や好みをうまく推定できている、といった条件がそろって初めて、目的にかなった話題を相手にふって話が自分の思ったとおりに進むのだろう。後者が特に難しいことであり、よく人を観察していなければなかなかできない。

小難しいことがつらつらと書かれた本ではないので、さっと読んでなるほど、となり、ついでにコアな主張がわかると満足できる。

世界のトップエリートが実践する集中力の鍛え方(荻野淳也ら)

GOOGLEを始めとした一流の組織は社内の研修で積極的にマインドフルネスの実践を取り入れている。仕事をする傍らで次々に送られるメールに対応しなくてはならないような現代の働き方ではマルチタスクが当たり前になっている。しかし忙しい一方で実はマルチタスクは仕事の効率性を落とす働き方なのである。ともすれば自動運転の様になりがちな忙しい生活の中で洞察力を働かせるために立ち止まって考えることが結果を出すことにつながる。一つの事に集中することが重要で、マインドフルネスの実践によりそれは鍛えることができる。マインドフルネスとは「意図的に、今この瞬間に、評価と判断とは無縁の形で注意を払うことから、浮かんでくる意識」のことである。眼の前にいる相手にしっかりと注意を向ける能力、習慣につながるものである。いまにフルに注力することで複雑でま苦しく変化するビジネスの荒波を、的確な判断のもとで乗り越えることができる。
 
現代はVUCAワールドと呼ばれており、変動の幅が大きく(Volatility)、不確実で(Uncertainity)、複雑で(Complexity)、問題の所在がどこなのかさえ曖昧(Ambiguity)である。このような世界でただ立ち尽くすだけではだめで、しかもコントロールできない不安定な世界を前向きに受け入れ、疲弊しても速やかに立ち直る力(すなわち、レジリエンス)を身につけることが重要。ルールがどんどんかわるような世界、矛盾をはらんだ世界でもそれを受け入れながら、なおかつ前進し続ける人物がこれからの世界で活躍していく。パフォーマンス重視の考え方か、メンテナンス重視の考え方か、という視点で組織を見るPM理論というものがある。パフォーマンス重視であれば短期的に成果を出すことはできるだろうが、中長期的にはメンテナンス重視の方が成果がでてくる。
 
また、リーダーシップにはセルフアウェアネスが重要だと言われている。これは自分の内側にあるものに意識を向けることであるが、同時に相手に関心を持ち、共感することが必須である。ポジティビティの高い状態にあれば、穏やかに持続する快適な心理状態を手に入れることができる。マインドフルなリーダーとは「深い洞察力と自己認識を持つ」、「無知の知(知らない、ということを知っている)」を受け入れる謙虚さと好奇心を持つ」「自己の価値観と外部(組織、社会)に向けて果たすべきことを統合する」、「強い信念と軽やかさをあわせもつ」、「ビジョナリーで天命に生きるが、固執しない」ような人のことを指す。
 
マインドフルネスの実行により、脳の活動性にも変化が出てくることが報告されている。瞑想の経験を積むことで、幸福感がましてくる。しかも、この能力は特別な才能を持った人にのみ身につくものではなく、誰もが訓練・習慣化することで身につけることができる。
 
本書の後半はマインドフルネスの実行の仕方について紹介されている。自分の呼吸にまず意識を向けること、意識が離れたと思ったらそれを認識して意識を再度戻していくこと、などのプロセスが紹介されている。本を読むだけではしょうがないので実際にやって習慣化してみることで本書を読む目的が達成されるのではないだろうか。他にもクイック・ボディスキャン、マインドフル・ウォーキング、マインドフル・イーティング、ラベリングなどの手法が紹介されている上、通勤や、職場、休憩時、退社時、帰宅、酒席などでの実践やマインドフルなコミュニケーションのあり方についても紹介されている。重要なのは今この瞬間に集中を向けることなのである。
 
マインドフルネスの概念から実行まで簡潔に書かれた入門書。実践の部分が丁寧で、少し実行してみようと思った。様々なシチュエーションでのマインドフルネスについては少し眉唾な印象。スタンフォード大学、マインドフルネス教室は理論だったことはわかりやすかったがいまいち実践に移しにくいと感じたので、そういった意味ではこちらのほうがわかりやすい。
 

小学生のための読解力をつける魔法の本棚

 

「小学生のための」本ではあるが、小学生のために骨をおる大人向けに書かれた本。電子書籍で購入しているが、第8版と何回も重版されているベストセラーであるらしい。親はいつも子供の学力のことを気にするものでありこういった本はいつの時代にもニーズはある。

 

著者は有名な男子御三家麻布学園の国語教師ではあるが、麻布中高をでて東大の文学部で博士課程まで出ているので身につけた教養や知性は学者並みなのだろう。とはいえ、論調、主張はいわゆる社会科学的なアプローチではなく(「学力の経済学」は統計学的アプローチを重視した「学問的な書籍」だが、本書はそうではなく)、教師としての経験に基づいたもの。度々生徒のエピソードがでてくるが、生徒をよく見ているような印象の教師だという印象を受ける。しかし、本書のテーマは中高生の読書ではなく、小学生の読書。少し手を添えてあげるだけで自分ので道筋を決められるいのは中高生から。小学生はしっかりと親が道筋を示してやらないとうまく育たない、という見解のもと、言葉を身につけるというレベルから、中学のトップクラス校の入試のレベルの読解問題が読めるようなレベルの読書まで、非常に幅広くカバーされた指南書。小さい頃から読み聞かせをしながら文字にしたしませる、そこから音読をさせる。登場人物の主観を理解しながら読むことができたら次に自分の意見を交え批判的な読書を行う。また、読んだものを数百文字に要約する癖をつける。と実践的なアプローチが述べられる。麻布中高に通うくらい知的レベルが高く早熟な子供であっても全員がガリ勉というわけではなく、マンガだって読むし、各々が興味のある本を読んで知性を育んでいるという。良書は別に難しい本というわけではない。良い本は良い本だ、という見解の元、手塚治虫の本なども推薦されている。まとめ的に入試の長文問題が取り上げられているのは中学受験をさせるような親向けの本というところでニーズをよく押さえた仕様になっていると思わされるが。。。

 

巻末で半分近くを使って紹介されている本は言葉を覚えたての子供から小学高学年(ほぼ大人?)向けの本まで幅広い。自分も小さい頃に読んだな、という本が多く、学習書ではないせよここで紹介される本は古典といっても良いものなのだろう。

 

自分の話になってしまうが、自分も小学生の頃に親に買い与えられた名作を非常にたくさん読んだ。一度読み始めると最後まで読み終えないと気が済まなかったので、大体の本はとにかく集中して読んだ記憶がある。相当数の本を読んだ後は部活に受験に、と忙しくなって中学生になった時には本をほとんど読まなくなってしまった。大学生の頃くらいにまた小説を少しずつ読むようになって、最近ではなんでも構わず読むようになった。本を読むことが言語能力の取得目的であったものは、今ではその内容から学ぶための読書になって、高度な構造を理解するためにわざわざ線を引いたりノートにまとめながら読んでいる。国語の授業でいやいや学ぶためにやっていたことは今ではごく当たり前の習慣になった。著者も述べているが、読書は決して受験だけのためのものでは無く、生涯役に立つことなのだと思う。読書に向かわせる入門書として教育者の立場からの意見を見ることができた。

 

 

 

個人心理学講義 生きることの科学(アルフレッド・アドラー)

 

個人心理学講義―生きることの科学 (アドラー・セレクション)

個人心理学講義―生きることの科学 (アドラー・セレクション)

 

 2013年に出版された嫌われる勇気で有名になったアドラー心理学。簡単な解釈本を手にして勉強して見たことはあったがあまりにも平易な解釈に落とし込み過ぎていたために根底的な論理が全く理解できず、本人の出版物を読んで咀嚼しようと思い手に取った。

 

アドラー心理学は「勇気の心理学」と言われるように個人の心理状態を変えることで全てがうまくいく、という内容なのかと思っていたが、本書の内容はその裏にフォーカスを当てたもの。すなわち、劣等コンプレックスを持つことと不利な状況に立たされる事で人は社会的に適応ができず、それが精神的な問題にまで及んだり、社会的な成功を得ることができないことにつながっている、ということだ。アドラーによればそういった劣等コンプレックスから引き起こされる負のカスケードを解決してくれるものが共同体感覚であったり、社会の協力であるという。この”共同体感覚”というのがなんなのかをよく理解することがアドラー心理学をポジティブな意味で人生に役立てるのに必須であると思う。劣等コンプレックスであっても優越コンプレックスであってもそれを個人のネガティブな側面にしない、仲間の感覚や、社会の支援がある事が個人の救済に繋がるというのが本書の結語であり、アドラー心理学の真髄なのだろう。

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代(アダム・グラント)

 

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (単行本)

ORIGINALS 誰もが「人と違うこと」ができる時代 (単行本)

 

 

新規事業で業績を上げるためには他の人と違ったオリジナリティが必要になる。一般的には成功する人々は特別であると考える人が多いが、必ずしもそうとは限らない、というのが本書のメッセージの中で一番印象的だった。うまくリスクオフをしながら目標に向かって着実に向かっていくということが大事。副題にある通り、誰もが「人と違うこと」ができる時代にける成功の分析。リスクをどのようにマネージメントするのか、アイディアを行動に起こしていくこと、プレゼンテーション、行動を起こす時期、人間関係といった企業のことから、兄弟におけるアイデンティティの差、組織論といった広い範囲に渡り研究が紹介されている。特に個人の話は前半。後半になるに連れて話は他の人も巻き込んだスケールの話になる。起業したいけれどしていない、という人が世の中圧倒的に多いので、多くの人は前半の話の方が気になるのではなかろうか。成功した起業家はみんなSteve Jobs氏のような奇抜で飛び抜けた人ではない、ということを確認させてくれて背中を押してくれるような気分にしてくれる。
 
ワービーパーカー(Warby Parker)というメガネブランドは大学生4人が立ち上げたオンラインメガネブランドである。この会社はメガネをオンラインで低コストで提供しており、近年勢いがある。この立役者たちも全員全力で事業に全生活を捧げた天才的カリスマだったかというと実はそうではない。彼らの起業の初期は学業・就活との両立の道だった。リスクをとり全てを投げ打つことが起業において唯一の道ではない。むしろ本業を続けた人のほうが失敗のリスクは低くなる。成功者、つまり業績を達成する人に共通するのはオリジナリティ(originality)であり、みずからのビジョンを率先して実現させていく人が持つ特性だ。これらの人は既存のものを疑い、より良い選択肢を探す。イノベーションのジレンマで知られるクリステンセンも唱える通り、イノベーションとは古いやり方を撤廃する新しい仕組み(創造的破壊)によってもたらされるものだ。リスクの話は成功と直接的に結びついているわけではない。ただ、リスクオフはむしろ重要なことである。ある分野で危険な行動を取ろうとするなら別の分野では慎重に行動することで全体のリスクのレベルを弱める事ができる。そのため、安心感が生まれ、発揮すべきところでオリジナリティを発揮する自由が生まれる。成功者はリスクを取り除くことにも成功するものである。
 
アイディアはなんでも行動に移せば良いというものではない。自分のアイディアは過大評価しがちであり、他人の評価も重視する必要がある。少ないアイディアを大事に温めるよりはアイディアの数は多ければ多いほどよい。そうであることが良いアイディアを生むことにつながる。大量生産こそが質を高めるためのもっとも確実な道である。(商品の企画などでブレインストーミングが重要視されるのもこのためだ。)評価者は自分以外にも専門家や同じ分野の仲間、パフォーマーなどから広く意見を集めたほうが良い。そして海外での生活などで様々な視点を持っていると良い。専門家は経験が豊富である一方、新しい分野には弱いのが欠点である。
 
コミュニケーションの仕方も人への印象付けがとても変わってくる。あるベンチャーは重要なプレゼンの際にあえて自分の弱点をさらけ出すことで相手の軽快を和らぎ、知的な印象を演出し、信頼性を増すことでよりポジティブな面に注目を得ることができた。プレゼンの際には繰り返しが効果的である。
 
現状に不満をもったときに人々が取る態度は4つある。組織の利益を重視するか、現状をかえるかという面から2x2に分けると、発言する、粘る、離脱する、無視するといった4つにわけられる。行動をするかどうかの時期も人によっては有用で、実行を先延ばしにすることは問題解決に秀でたクリエイティブな人にとっては有益である。アイディアを実現するにあたって先発が常に有利というわけでもなく、じつは先発のプレイヤーの方が失敗率が高くなる。先行者は時代を先取りすぎていることが多く、それが効果的に働くのは特許技術が重要なときやネットワーク効果があるようなときだ。
 
オリジナリティの発揮の仕方も人により異なる。若い時にイノベーションを起こす人は天才物理学者達がそうであるように概念的イノベーションを起こすことがおおい。一方、粘り強く努力する人はこつこつと実績を重ねることで実験的イノベーションを起こす。生涯という長いスパンで見たときには実験的なイノベーションのほうが長続きする。
 
プロジェクトをだれとやるのか?仲間づくりにはゴルディロックスの理論というのがある。ほどほどの適度な状態、という意味である。オリジナルな人は得てして熱すぎる。周囲と上手くやるためにはソフトなメッセージが必要。フロイトによれば、非常に似通っている2者があつまると、僅かな違いが違和感や敵意を生み出す原因となる。類似しているだけでは最後には敵意を産んでしまう。協力は性格の類似でなく、手段の共通が重要なのだ。外部に受け入れられるためにはオリジナルな人は節度ある過激派にならなくてはならない。人間関係については、友である敵であるフレネミーに最も注意をはらうべき。
 
兄弟間での性格の違いは昔からよく研究されているところである。一般に後生まれの子はリスク傾向があり、現状打破をねらう人格になりやすい。自分が生まれたときにすでに兄弟が生まれていたことにより、現状を変える傾向が生まれたり、自分の立場から自分の振る舞いを考えたりするようになる。創造性の高い子供は自分の価値観に従うようになる。これは成長する中でルールにしたがう自己判断を行うことや、道徳的規範を身に着けていくことで形成されていく。
 
組織として、問題解決や賢い判断をするためには独自のアイディアや相反する視点をもつ人が必要である。組織の中の反対派の意見こそ大事にしなくてはならない。組織は専門型・スター型・献身型などにわけられる。同じ情熱や目標に支えられた献身型の組織は強い一体感を産み・団結力を高めるため初期には良いが、伸び悩むことになる。
 
オリジナルな人は決して強くない。感情や自己不信に悩むこともある。こうしたときに不安を感じながらも起こりうる悪い自体を予測しておくことがモチベーションや成果につながる。ネガティブな感情でブレーキをかけることもポジティブな感情で興奮とともに進めていくことも必要で、使い分けがいるのである。