理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件(成毛 眞)

 

理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件 (朝日新書)
 

 HONZの成毛さんの本。Kindleでささっとダウンロードして読了。ちなみにであるが、マイクロソフトで若くして社長を務められていたことはプロフィールを拝見して初めて知った。HONZは毎日拝見させていただいている。

 
 新しいものに興味を持ち、目の前のことに本気になり、自分と関係ないことにはあえて関わることを避け、合理的なコミュニケーションを持つ人材こそが活躍する、といった内容。
 
 本書ではこのような人材を「理系脳」と評している。筆者も述べていることでは有るが、理系脳と文系脳は別に高校や大学での学習の内容のことではない。上のような能力を備えた人を理系脳を持つ人と評しているだけのことだ。
 
理系脳
文系脳
新しいものに興味がある・変化が好き
保守的
刹那主義で未来志向。その瞬間瞬間に我を忘れて没頭する。
キャリア志向、きれいなキャリアを積むことに必死。人脈やコミュニケーション能力を重視する
コミットの範囲が明確。自分ができる範囲のことを冷静に分析する。
自分と無関係のことに興味津々
コミュニケーションが合理的
コミュニケーションにおいておべっかをつかったり愛想笑いをする
 
 理系脳と文系脳の対比を行うとこのような感じになる。歴史上の偉大な人物も、現代の億万長者も多くは理系脳を持った人だという。現代の理系脳が最も興味を示すのがSTEMという分野だ。サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マスマティクスの頭文字をとったものだ。そこにアートが加えられてSTEAMと呼ばれたりもする。
 
 理系脳とは世の中を冷静な目で見て、自分がどうすれば良いのかを常に考える人間だ。そして目標に向かえば一心不乱に打ち込む。一見すると変わり者と言われそうな人ではあるが、たしかに現代のようにスペシャリストこそが莫大な価値を有無時代において、いわゆる「選択と集中」ができる人材のほうが強いのは納得ができる。気づけば文系脳といわれるような行動をとってはいないだろうか?文系脳と述べられる行動はイノベーションを阻害するだけなのだ。

ギリシア人の物語II

 

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

 

 

ギリシア人の物語Iでは古代ギリシャの民主制の発展が主なテーマであったが、ギリシア人の物語IIでは民主制の最盛期とペロポネソス戦争による民主制の衰退を描いている。アテネ民主制を代表するペリクレスの時代から、戦争へ突入していき没落していく様子が描かれるアテネを見ていると気分が苦しくなる。
前半の主人公はペリクレスアテネの民主制の代表であるストラテゴスに32年間も連続で当選してその間事実上のアテネの代表であった政治家だ。弁舌にとても優れていた政治家らしく、数々の演説が伝えられる。

「貧しいことは恥ずべきことではない。しかし、その貧しさから脱しようと努めず、安住することこそ恥ずべきことであるとアテナイ人は考える」

など、現代の日本人にも聞かせたくなるような言葉だ。
ペリクレスの時代は今から2500年も前なのに、ペリクレス時代に強まったデロス同盟ギリシャ北部から現代のトルコにいたるまでの広域なポリスによる同盟。日本が縄文か弥生だった時代にこの地域ではここまでの広域な交易が行われていたのは驚きでしかない。しかもアテネでは商品を輸出して稼いで、食料は黒海方面から輸入するという自給自足でない生活をしていたという。古代は交易によって栄え、交易が衰えた中世よりもむしろ豊かだったというのは「繁栄」での記載だったか、専門化と連携というのがいかなる時代でも重要なのだと考えさせられる。ともあれ、ペリクレス時代にアテネは支配力を広げ、豊かな生活、文化を育んだ。

状況が変わってくるのがペロポネソス戦争アテネとスパルタの二大ポリスによる戦争だが、この戦争の初期段階でペリクレスは病死してしまう。

ペリクレス時代が終わった後、アテネデマゴーグ時代に突入する。そこで頭角を現したのがアルキビアデス。弁舌も戦闘もできるというスーパーマンだったというが、アルキビアデスはその能力を発揮することなく幾度も途中で頓挫させられる。衆愚政治とはちょっとしたことで足の引っ張り合いを繰り返すのだ。ペロポネソス戦争の後半でアテネシチリアへ遠征にいくが数万人規模で兵を失う無残な結果に終わる。そこから一度は盛り返すが最後にはスパルタに敗れて覇権を失う。アルキビアデスは、シチリア遠征の時にアテネから罪を着せられアテネから抜けてスパルタへ、そしてその後ペルシアに行った末にアテネに戻る。しかし十分な活躍ができないまま暗殺されてしまう。

第I巻で見た希望あふれる民主政治から、時折現れるカリスマによりリードされる国家から一転、カリスマ不在となった国は迷走していく様が良く描かれている。一旦衆愚が世論を席巻してしまえば冷静な判断は誰にもできなくなるのかもしれない。本巻では描かれていないがこの後アテネソクラテスという偉大な思想家をしに追いやっていくことになる。

 

 

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

 

 

 

ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃(小林雅一)

 

 ゲノム編集の衝撃はCRISPER-CAS9という2010年代になり世の中に出てきた最新のゲノム編集技術を解説した本である。
CRISPERという遺伝子自体は日本人が見つけたものだった。1990年前後の頃であったが、その遺伝子が脚光をあびるまでには約20年もの年月が必要だった。2010年代になり、ダウドナ、シャルパンティエ、チャン氏ら、アメリカの研究者により相次いで報告された。この技術はそれまで不可能だったほぼ100%に近い精度で特定の遺伝子の特定の配列の場所を組み替えることができる。
初期の遺伝子改変の技術は精度が非常に悪く、ノックアウトマウスという特定の遺伝子の働きを止めたマウスを作り出すのに半年から一年はかかっていた。2つある相同染色体のうちの片方の遺伝子に遺伝子改変を起こすのだけでも大変なのに加えて、2つともの遺伝子で遺伝子改変を行うためにはマウスの交配という手順まで踏まなくてはならないためだ。
しかし、CRISPER-CAS9による遺伝子編集は精度・正確性が高く、現在ではほぼ100%遺伝子を作り変えることができ、ノックアウトマウス作成にかかる時間はマウスを育てる時間にほぼ等しいたった2週間程度となる。おまけに技術としては習得は容易い。
非常に高精度で遺伝子編集が行われることができるようになり、その応用には夢が広がっている。医療の世界では遺伝子変異から発症する病気の治療や、そもそも子供の遺伝子編集を行うことで生まれる前に遺伝子編集を行うことも可能になるかもしれない。作物の遺伝子編集をおこなったりもできるし、応用は限りない。そうした研究への倫理的な枠組みの作成が急務として求められている。また、この新しい技術は非常に将来性を期待されており、開発者達(とその所属機関)はその特許を巡って争いを続けている。そして開発者達が携わるスタートアップは巨額の資金が大企業から流れており、産業へ流用しようとする動きも顕著。
科学者コミュニティの中では有名な技術で、今、AI、ブロックチェーンと並んで注目を浴びている分野だ。

 

インターネットの次に来るもの(ケヴィン・ケリー)

 

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

 

1. BECOMING
2. COGNIFYING
3. FLOWING
4. SCREENING
5. ACCESSING
6. SHARING
7. FILTERING
8. REMIXING
9. INTERACTING
10. TRACKING
11. QUESTIONING
12. BEGINNING

人類がインターネットを発明した時、当初はニッチなシステムであり、あまり見向きもされていなかった。ごく一部の人だけがその真の価値を見出してインターネットを成長させ始めた。今ではインターネットは世界の何十億人にも行き渡り生活の隅々にまで行き渡っている。中国の水道が通っていないような地域でも人々はスマホを片手に生活を送っている。テクノロジーは世界を変えたし、今後もおそらくそうなるだろう。本書はインターネットの普及時代の次に世の中にもたらされるテクノロジー革命を展望する。
読んでいる最中に故Steve Jobs氏が1995年ごろにインターネットの未来を興奮気味に語る動画がTwitterでシェアされているのを見た。彼はインターネットが世界を変えることを知っていた。インターネットが個人に浸透し、コミュニケーションのあり方や購買行動を変えることを。そして実際にSteve Jobsは思い描いた未来を実現するかのように世界にスマートフォンを爆発的に普及させて旅立った。今、勃興しつつあるAIやVR、ブロックチェーンのような技術は世界を変える大きな期待を背負っている。本書は既存の技術がどのようなレベルにまできているのかをよく解説する。そして未来の技術についても。未来の描き方は技術ベースの基礎的な話が多くやや抽象的だ。しかし、今ある技術が発達することで今後訪れるであろう未来への夢は広がる。本書で最もフォーカスが当たっているのはビッグデータだろう。ビッグデータは多くの人が取り組む課題ではあるがまだまだどのように世の中を変えていくのか姿を見せていない(ように見える)本書のような刺激から実際に世の中をかえるサービスが生まれていくことに期待したい。実際の未来は本書の内容からも想像もつかないものが訪れるのかもしれない。

映画「スティーブ・ジョブズ 1995~失われたインタビュー~ 」特別映像 - YouTube

 

COGNIFYING
現存するAIやロボットはおそらくこれからどんどんと賢くなっていくだろう。AIは人間の仕事をかわりにやってくれるようになり、人間はそのAIが代わった仕事に応じて新たな仕事を始めるようになる。現在の単純作業しかできないロボットも将来的にはもっとスマートなものに変化していくだろう。

FLOWING
デジタルの世界で最も変化したのはコピーが容易になったことだ。工業時代ではコピー品(大量生産品)を手に入れることがステータスだった。しかし、デジタル世界のコピーは最も簡単にできてしまう。つまりコピー自体には価値がほとんどない。今のインターネットのサイトが生み出している価値の多くはそこに対して付随するコメントやリンクなどの有用な情報であり、今後主流になるのはコピーされたもののパーソナライズになる。ユーザーに合わせて文章やメディアが形を変えるようになる。紙の時代の特色であった固定化は、デジタルの世界になればもっと流動的なものになっていく。

SCREENING
スクリーンは今は年に1つずつ全世界の人々に行き渡るようなペースで生産されている。スクリーンは家に溢れているが、それらはさまざまな機能をもちより生活に密着したものになる。おそらく将来は朝起きてから夜寝るまで、もしかすると夜に寝ている間すらもスクリーンの助けをかりながら生活する時代が来るかもしれない。

ACCESSING
人類が生み出すプロダクトはこれまで素材の改良などにより改善された。小型、持ち運びができる目的で改良は行われていた。しかし現代の改良は非物質化が進んでいる。デザイン、プロセスなど手に触れられないものが発展している。クラウドブロックチェーンは特に目覚ましい。

SHARING
カスタマーが参加してコンテンツを生み出すサービスは近年になり始めて登場した。資金調達さえクラウドファンディングという新しい携帯が出てきている。新しいサービスは昔には思いつきもしなかったものだ。30年後に台頭しているサービスも今の私たちには思いもよらないものであると思われる。

FILTERING
我々は大量のデータの海の中にいる。この海を全て見渡す事は不可能だ。必然的にフィルターが必要になる。SNSでは友人のシェアがフィルターの役割を果たしている。こうしてアテンションが集まる事は金銭的な価値にもつながる。モノの価値は下がり続けるが、人間の経験の価値のコストは唯一増加している。


REMIXING
持続的な経済成長は全く新しいものからではなく、既存の資源の再編成により生み出されるものだ。

INTERACTING
VRやARは非日常的な体験をもたらしてくれる。これらはパソコンに次ぐ破壊的変化をもたらすプラットフォームになりうる。VRやARは職業訓練などにも使用しうる。

TRACKING
何かをモニターし記録するという行為によりデータはどんどんと増殖する。そしてそのデータから生まれたデータも世の中に産み落とされる。あらゆるものをトラッキングしたデータから得られる知見は世の中にインパクトを与えるだろう。しかし、その中でも匿名性の問題がある。

QUESTIONING
グーグル検索は劇的に調べ物を容易にした。人々は1回の検索行動により従来よりも何分間時間を節約することができる。一日にどれほど多くの検索が行われているかを考えると、その経済的効果は絶大だ。グーグルは検索自体からではなく、広告から収入をえており、検索自体は無料でできる。一方で質問を生み出していく事は答えることよりも難しい。

BEGINNING
世の中のデータは複雑になり続け、人工知能は発達し続ける。今後シンギュラリティと呼ばれる状態が到来する日も近いだろう。シンギュラリティに悲観的な想定もある。AIが人間を支配するというものだ。しかし実際に起こるのはAIと人間が相互依存へ向かうような弱いシンギュラリティなのだろう。

 

さよならの先(志村季世恵)

 

 

さよならの先 (講談社文庫)

さよならの先 (講談社文庫)

 

 

 

ダイアログ・イン・ザ・ダークというイベントを開いていることで有名な方の本。全盲の患者の世界を体験するというダイアログ・イン・ザ・ダークの活動の話は最終章で少し紹介されるくらいで、本書はセラピストとしての活動の中で終末期の患者とどのように向き合ってきたのかという話。

志村さんはもともと旦那さんと二人で薬局の仕事とセラピストとしての活動をしてきたという。旦那さんとが2007年に急逝されたその前後の頃にセラピストとして出会った何人かの終末期の方々の話が紹介される。

 

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多くは比較的若い段階でがんに罹患、治療を行う中病状は悪くなり、生への絶望に苦しむ中で志村さんをしり、助けをもとめて知り合っている。自閉症の子供が社会へ出ることへの支援などもされていたようだ。医療を提供するという活動の中で医師ができることの中で中心にあるのは疾患の治療であると思う。しかし、現代の医療はそれだけでは完結しない。志村さんのような精神面のケアをする方は医療現場に欠かせないものになっており、診断の衝撃や、治療への不安、うまくいかない時の心のケアに大きな役割を持つ。

治らない病気や、がんの末期になった時にどうやってその事実を受け入れていくのかというのは人により本当に異なっている。自閉症の子供には時間をかけて両親が受け入れられるようにして、子供はその能力の範囲の中で生きる道を見つけてもらう。がんの末期の方々には必要な支援がなんなのか、それぞれ個別に考えて支援をする。その人の生活の中に出会ったばかりのセラピストが入り込んで全人的な支援を行うというのは「これが本当に仕事になるの!?」というようなものも多い。ほぼ自発的な優しさからこういった支援をされているのだと思った。実際の医療現場や患者の中にも家族がいない人や身寄りがない人は多く、そういった人が最期を迎えるにあたり、非常に不幸な気持ちのまま過ごすということが多いように思う。人の関わりとか生きがいとか、そういった事は医療行為として値段に算定できないものではあるけれど患者にとっては金銭に変えられない大きな価値になるものなのだと思う。

筆者は一人一人に寄り添い、その時にどう考えたか、ということをありありと描くが、一般論を語る事は少ない。身近な人が終末期を迎えた時、本書の読者が本書のことを心の片隅い思い出しその時毎に優しく手をそえてあげられるようになれば、と思う。

 

 

 

 

 

 

 

 

ワーク・シフト (リンダ・グラットン)

 

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

ワーク・シフト ― 孤独と貧困から自由になる働き方の未来図〈2025〉

 

 

 向こう数十年の世界を形作る5つの要因

・テクノロジーの進化
グローバル化の進展
・人口構成の変化と長寿化
・社会の変化
・エネルギー・環境問題の深刻化

 産業革命の世界でも、テクノロジーの進化に続いてエネルギーの進化が起きることで社会が劇的に変化していった。現在の私達の世界で起こりつつあるテクノロジーの変化の最たるものが今後50億人が世界中でインターネットで繋がる社会が実現されることだろう。インターネットで繋がる世界のグローバル化、また、人口の都市へのシフトの結果、都市の内部には高度な教育を受けたエリート層と、貧困層が共存するようになる。グローバル化第二次世界大戦の後から進んだ現象で、年代層が下るにつれて20世紀の後半に起きた劇的な技術的進歩がより生活に馴染んだものになった。1990年代後半に生まれた世代は物心がついた頃からインターネットにつながれた世界で過ごし、SNSがごく当たり前の社会で暮らしている。しかし人口は若年層以外のベビーブーマーの世代が最も多く、先進国では21世紀中盤になると高齢者が人口の多くを占めるようになる。イタリアのように(日本も同様だろうが)高齢化が進む地域では、年金支給開始年齢を引き上げるか多くの移民を受け入れるしか解決策がなくなるかもしれない。エネルギーの問題も全くまだ解決されていない。エネルギーをどこから拠出するのか、環境問題をどのようにしてクリアするのか?場当たり的な政策ではなく、着実に技術を進歩させることが非常に重要である。

 
本書では予想される未来にもとづいて6パターンの生活スタイルが例証される。
 
◯ 働き方の未来と取るべきシフトの内容
インターネットが全ての場所を繋ぎ、ワークスタイルは激変する。家、リモートな職場を駆使して朝から寝るまで世界中とつながり仕事をする生活。時間は細切れになり、絶え間なく降り注ぐ仕事をこなす毎日。筆者は警鐘を鳴らし、常に何かに追われることで腰を落ち着けて物事に取り組むことができなくなることを心配している。
 
“私たちは仕事の世界で「気づかないうちに積み重なる既成事実」に慣らされてはいないか”
 
“時間に追われるあまり、価値ある技術や能力に磨きをかける機会をなくしている”

 

この未来からの脱却のためには次の3つが必要だと説く。
・専門技能の習熟に土台を置くキャリアを意識的に築く
・せわしなく時間に追われる生活を脱却しても必ずしも孤独を味わうわけではないと理解すること
・消費をひたすら追求する人生を脱却し、情熱的に何かを生み出す人生に転換すること

 

また、インターネットによるつながりの裏で、実際に職場で顔を付き合わせる事が少なくなり、孤独が広がるかもしれない。そうした未来を切り開くためには3つのタイプの人的ネットワークを構築する必要がある、
 
・「ポッセ(同じ志をもつ仲間)」。いざというときに頼りになり、長期に渡って互恵的な関係を築ける少人数のグループ
・「ビッグアイデアクラウド(大きなアイデアの源となる群衆)」多様性に富んだ大人数のネットワーク
・「自己再生のコミュニティ」。頻繁に会い、一緒に笑い、食事をともにすることにより、リラックスし、リフレッシュできる人たち

 

 
◯ 働き方
私は米国で言うY世代(1980年代〜1990年代生まれ)に相当する。自分がそうであるように、Y世代は”仕事でとりわけ重きを置く要素は、学習と成長の機会を得られること"であるようだ。この世代は今後ワークライフバランスを重んじるようになる。そして自由を求め、創造性を発揮することが大事にされる。先に触れた付き合うべき人々が重要になる。本書で触れた好ましい未来において活躍する人々はインターネットを駆使してゴリゴリ働く人々よりはむしろ喜びのために働く人々だ。自分がやりたいことのために社会貢献をすること、自分の才能・趣味を手工業のように小規模事業者として社会に出していくこと、人々のつながりをうまく利用してプロジェクトを想像していく人が紹介される。こうしたことができるようになるためには以下が求められる。 
“今必要とされているのは、昔の職人のように自分の専門分野の技能と知識を深める一方で、他の人達の高度な専門技能と知識を活かすために人的ネットワークを築き上げることだ。”
“そのうえ、リスクを回避するために複数の専門分野に習熟しなくてはならない。一言で言えば、連続スペシャリストになることが不可欠なのである。”
“技能や能力が高い価値を持つためには、他の人にまねされにくいものである必要がある。”

 

こうした模倣されにくい専門技能として、生命科学・健康関連、再生可能エネルギー関連、創造性・イノベーション関連、コーチング・ケア関連が挙げられている。専門性を磨いた上でポッセやビッグアイデアクラウドの人々と協力して専門の集中と多様性を活かした仕事を勧めていくことが今後の創造的な仕事を生み出していく。
 
働き方や仕事で生み出す価値に対する考え方は世代によってもかなり異なっているようにも思う。長期に渡って続く組織のトップの多くは「一所懸命」といった働き方で組織を支えた人が多い一方で、30代・40代のリーダーの中にはマルチな才能を活かして活躍する人も多い。Y世代、Z世代の多くが社会でリーダーとなるのはこれからの2020年代・2030年代になる。そう遠くない未来で活躍するためには時代が求めるものやテクノロジーを知り、多くの選択肢の中から限られた時間で自分の生き方をデザインする考え方が重要になるように思った。

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり(塩野七生)

 

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

 

 

ローマ人の物語で有名な作者が2015年ごろより刊行を始めたギリシアをめぐる物語。
 
ギリシアはローマの前の時代、紀元前5、600年ごろに花開いた文明の象徴となる。現代にも復活したオリンピックは都市国家の集合体であったギリシア人が戦争をやめるために行う4年に1回の大会として成立し、何百年もの間続いた。
 
都市国家としていくつもの国家が乱立していたが、代表的な都市といえばアテネだろう。女神アテナの守護のもと発展した都市国家である。もう1つの強国、スパルタはリクルゴスが制定した憲法により、市民が盲目的ないわゆるスパルタ教育を受け強力な軍隊を保持していた。アテネの特徴は直接民主制にある。かつては貴族制であったアテネはソロン、ペイシストラトスクレイステネステミストクレスペリクレスという五人が代わる代わる改革を続けながら発展した。
 
アテネは当初貴族制であったが、改革者たちの手によって完全に民主化されていった。とは言っても女性や子供には選挙権はなかったという。収入により市民は4つの階層に分かれた。上位の金持ちの層だからといって金を上奏すれば良いというわけではない。アテネにおける税金とは、すなわち戦役であった。金持ちは重武装をして戦う階層であった。アテネでは直接民主制がしかれ、重要なことは選挙で決まっていった。とはいえ、民衆の代表的な存在はおり、そういった人々により政治の大きな流れは形作られていった。本シリーズの1巻はアテネギリシャ都市国家(ポリス)の中でどのようにして地位を高めていったのか、という物語である。アテネは焼き物を輸出することで外貨を稼いでいた。また、紀元前5世紀というはるか昔の時代にペルシャ〜イタリアに至る広大な領域にかけての広い交易をしており、ギリシャ人がイタリア、シチリアまで入植もしていた。以前にも取り上げた「繁栄」では、この時代の地中海は盛んな交易により前後の時代と比較して非常に豊かな暮らしを享受できたと述べられていた。時代が下り、クローズドな国家が誕生するとむしろ経済的には衰退したという。しかし、重要なのは経済よりはむしろ軍事力の方であった。何百ものポリスが集まっていたギリシャでは延々とポリス同士の戦争が繰り広げられていた。その戦争を一時的にでも休戦に持ち込むために作られたのが前述のオリンピックである。しかし、ギリシャ人が一致団結した時代がテミストクレスの時代、すなわち、ペルシャとの戦いの頃である。本書の半分以上はこのペルシャとの戦いが取り上げられている。
 
結論から言えば、強大な戦力と広域な領土を持つペルシャの侵略に対して、ギリシャ人は総力を上げて防衛を行い成功した。第一次ペルシャ戦役では少数のギリシャ(ほぼアテネ)の軍隊がその何倍かの人数を誇るペルシャの軍隊にマラトンにおいて打ち勝った。そしてその後10年の間に国力を高めていったアテネをふくむギリシャは第二次ペルシャ戦役を、ギリシャの総力をかけた連合軍で迎え撃ち、撃退することができた。スパルタのレオニダス国王率いる300名の戦士の戦いやサラミスの海戦、そしてプラタイアの戦いといった戦いを経てペルシャ戦争はギリシャの勝利に終わった。
 
本書はペルシャ戦争で活躍した将軍たちの末路やペルシャの王の末路についても取り上げてある。テミストクレスやパウサニアスなど、ギリシャ軍の将軍たちは戦争後、国を追われ本意でない最後を遂げた。(Wikipediaなどの一般論ではテミストクレスは毒で自殺したと書いてあるが、本書ではそれはないだろう、としてある。)死んだ英雄はいくら讃えても害はないが、生ける英雄は権力を渇望する者にとっては邪魔者でしか無い、というのが非常に印象に残る。
 
歴史というものは後から振り返るものであるがゆえに諸説あり、という状態になりがちだ。本書にしても断りはあるものの独自の解釈が繰り広げられる部分もあり、全てを鵜呑みにはできない。しかし、ペルシャ戦争の記述やその考察についてはその当時のギリシャ側の緊迫が伝わるようで非常にスリリングだった。ヘロドトスを直接読もうとまでは思わないが、ギリシャのことが知りたいのであれば、このシリーズは読み応えもあり、良いだろう。