MarketHack流 世界一わかりやすい米国式投資の技法(広瀬 隆雄)

 

 

社会を知ろう、という目的から大学生の頃から投資をするようになった。投資をすることで自分の資産を市場のリスクに晒すことになる。このため半ば強制的に経済や社会を知るために勉強をするという意識がはたらく。ただ、社会を知るだけでは投資をするにはあまりにもリスキーなので一般的な資産運用の勉強もしている。Market Hackは本書の著者である広瀬氏が運営するサイトで、日本の個人ブロガーとしては最大級のPV数を誇る。情報の質が高いので私もフィードに入れている。本書は2013年ごろの本ではあるが、広瀬氏の考え方をうかがい知りたいと思って最近読んだ。時間も経過し考え方に多少の違いは出てきているとは思うが根底に大きくは違いはない。

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内容は投資全般について。米国株を基軸にしている方なので、おそらく自身が実践しておられるであろう分析方法について紹介されている。キャッシュフロー重視の分析、分散投資によりリスクオフをするメリットなどである。その当時から始まったNISAの分析や、デイトレーダーが行っている先物やオプションの取引、長期投資の考え方なども紹介される。広範囲にわたる話がコンパクトな中に納められている。本書を手に取る人はおそらくこれまでに投資経験がある方だと思う。読み物として楽しく、すっと頭に入ってきた。マジメに勉強するならもっと専門的な書籍を読めばいいが、筆者の言わんとしていることはこれくらいざっくりと省略されていた方が伝わってくる。こんな風にやってるよ、という内容なのでそれに従えば億万長者に必ずなれる、というものではないので注意を。
 

21世紀の歴史(ジャック・アタリ)

 

21世紀の歴史――未来の人類から見た世界

21世紀の歴史――未来の人類から見た世界

 

 

筆者は2060年ごろに超民主主義が勝利すると信じている。この超民主主義こそが、人類が組織する最高の形式であり、21世紀の歴史の原動力となる最後の表現である。つまり、それは自由である。
 
超民主主義とは、一国による世界の支配に終止符が打たれ、自由・責任・尊厳・超越・他者への尊敬などに関しては開かれる新たな境地のこと。
 
筆者のジャック・アタリは若干37歳でフランスの元大統領フランソワ・ミッテランの補佐官を勤め、初代の欧州銀行の総裁にもなった人物。人類最高の英知を持つといった評判も多く聞かれる人物。未来予測のような書籍を多く書いているが、筆者のこれまでの人類の歴史や現代社会に対する深い洞察から導かれる内容となっている。
 
 
・飽くなき富を求める資本主義
 
本書は人類の進化から、古代中世近代と歴史を振り返る形から始まる。人類は農耕を始めて、ノマドと定住民の戦いから分化が発達した。そのうち帝国が次々にあらわれては消えた。その中で民主主義や市場が生まれた。西洋では物質的な充実を求めることこそが神に近づくことだという考えが浸透した。これはアジアの代表的な思想である仏教儒教的に通ずる欲望からの自由とは全く異なる。民主主義時代の世界の中心都市は(アテネ→ローマ→)ブルージュヴェネツィアアントワープジェノヴァアムステルダム→ロンドン→ボストン→ニューヨーク→ロサンゼルスと西へと移っている。世界の中心となるためには交易の要であることや金融・保険が発達することが重要で、市場はそれらにより拡大し、個人の富を増やしていく。中心都市は中心都市の移り変わりはそれぞれの都市の衰退と新たな都市の勃興が起こることではあるが、覇権の移り変わりというのは大体は巨大勢力がライバルと戦っている時に得る第三者の漁夫の利のようだ。戦争の勝者とは戦わない国あるいは自国の領土で戦わなかった国だ。
 
中心都市は産業や人材の中心地となる。外国人エリートの受け入れなどは非常に大事であるというが、現在のアメリカが各国から優秀な留学生を受け入れて彼らが活躍しているという事実からも納得ができる。こうしたエリートにより革新的な発明が行われ発達していくのだろう。逆に教育水準が相対的に低下している日本には危機感を抱かずにはいられない。
 

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現在のベネチア(Flickrより)

・預言書としての本書の凄さ
本書は2006年に本国では出版されている。つまり、リーマンショックの前の世界からの考察だ。それなのに2017年現在までで話題になった世の中の出来事、社会問題を的確に捉えているのがすごい。リーマンショックが起こる前からアメリカの不動産バブルの危うさを指摘しているし、債務超過体質、イスラムとの戦争による多大な負担、スコットランド問題、LGBTの運動、中国の民主化革命運動、アメリカのナショナリズムなど、かなり具体的に社会問題を捉えている。さすがとしか言いようがない。ただ、BRICsや韓国、新興国に関してはやや過大評価をしていたような印象もある。中国の体制は2023年ごろまでに崩壊しそうとはあるが、習近平率いる共産党の牙城はなかなか崩れそうにない。もちろん、香港の雨傘革命のように、中国でも民主化運動が近年は活発化している。5年後の事は正直わからないかもしれない。
 
・超民主主義、超帝国、超紛争・・・
技術の発展は人々の生活をこれからも劇的にかえていくだろう。人々の移動は進んでいき、クリエイティブな人間が勢力を持っていく。本書はそこからアメリカのナショナリズムの台頭に続く中心都心の移動。民主主義なき帝国の台頭。それに続く様々な勢力との超紛争、そこから残る超民主主義、といったように21世紀を予想する。トランプが政権をとったアメリカのナショナリズムまでは予想の範疇だったようだ。その後のことは分からない。2017年現在はカリフォルニアに本拠をおくIT企業はかつてないほど反映しており、世の中に与える影響は国家規模ともいえる。現在の枠組みがもっと長く続いて世の中をポジティブに変えていくのか、ナショナリズムが様々な国家に広がり、そこから紛争が起こっていくのか、私には分からないがジャック・アタリのような賢明な人々が見ている世界はもっとはっきりしているのかもしれない。
 
2006年に出版された本書はジャック・アタリのその時点での集大成のような位置づけであったらしい。しかし、本書を読んで感銘をうけたのでもっと新しい本にも手を出してみたいとも思った。地政学の本は生もののようで、やはり旬なうちに読むのが良いかもしれない。
 

 

2030年ジャック・アタリの未来予測 ―不確実な世の中をサバイブせよ!

2030年ジャック・アタリの未来予測 ―不確実な世の中をサバイブせよ!

 

 

理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件(成毛 眞)

 

理系脳で考える AI時代に生き残る人の条件 (朝日新書)
 

 HONZの成毛さんの本。Kindleでささっとダウンロードして読了。ちなみにであるが、マイクロソフトで若くして社長を務められていたことはプロフィールを拝見して初めて知った。HONZは毎日拝見させていただいている。

 
 新しいものに興味を持ち、目の前のことに本気になり、自分と関係ないことにはあえて関わることを避け、合理的なコミュニケーションを持つ人材こそが活躍する、といった内容。
 
 本書ではこのような人材を「理系脳」と評している。筆者も述べていることでは有るが、理系脳と文系脳は別に高校や大学での学習の内容のことではない。上のような能力を備えた人を理系脳を持つ人と評しているだけのことだ。
 
理系脳
文系脳
新しいものに興味がある・変化が好き
保守的
刹那主義で未来志向。その瞬間瞬間に我を忘れて没頭する。
キャリア志向、きれいなキャリアを積むことに必死。人脈やコミュニケーション能力を重視する
コミットの範囲が明確。自分ができる範囲のことを冷静に分析する。
自分と無関係のことに興味津々
コミュニケーションが合理的
コミュニケーションにおいておべっかをつかったり愛想笑いをする
 
 理系脳と文系脳の対比を行うとこのような感じになる。歴史上の偉大な人物も、現代の億万長者も多くは理系脳を持った人だという。現代の理系脳が最も興味を示すのがSTEMという分野だ。サイエンス、テクノロジー、エンジニアリング、マスマティクスの頭文字をとったものだ。そこにアートが加えられてSTEAMと呼ばれたりもする。
 
 理系脳とは世の中を冷静な目で見て、自分がどうすれば良いのかを常に考える人間だ。そして目標に向かえば一心不乱に打ち込む。一見すると変わり者と言われそうな人ではあるが、たしかに現代のようにスペシャリストこそが莫大な価値を有無時代において、いわゆる「選択と集中」ができる人材のほうが強いのは納得ができる。気づけば文系脳といわれるような行動をとってはいないだろうか?文系脳と述べられる行動はイノベーションを阻害するだけなのだ。

ギリシア人の物語II

 

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

ギリシア人の物語II 民主政の成熟と崩壊

 

 

ギリシア人の物語Iでは古代ギリシャの民主制の発展が主なテーマであったが、ギリシア人の物語IIでは民主制の最盛期とペロポネソス戦争による民主制の衰退を描いている。アテネ民主制を代表するペリクレスの時代から、戦争へ突入していき没落していく様子が描かれるアテネを見ていると気分が苦しくなる。
前半の主人公はペリクレスアテネの民主制の代表であるストラテゴスに32年間も連続で当選してその間事実上のアテネの代表であった政治家だ。弁舌にとても優れていた政治家らしく、数々の演説が伝えられる。

「貧しいことは恥ずべきことではない。しかし、その貧しさから脱しようと努めず、安住することこそ恥ずべきことであるとアテナイ人は考える」

など、現代の日本人にも聞かせたくなるような言葉だ。
ペリクレスの時代は今から2500年も前なのに、ペリクレス時代に強まったデロス同盟ギリシャ北部から現代のトルコにいたるまでの広域なポリスによる同盟。日本が縄文か弥生だった時代にこの地域ではここまでの広域な交易が行われていたのは驚きでしかない。しかもアテネでは商品を輸出して稼いで、食料は黒海方面から輸入するという自給自足でない生活をしていたという。古代は交易によって栄え、交易が衰えた中世よりもむしろ豊かだったというのは「繁栄」での記載だったか、専門化と連携というのがいかなる時代でも重要なのだと考えさせられる。ともあれ、ペリクレス時代にアテネは支配力を広げ、豊かな生活、文化を育んだ。

状況が変わってくるのがペロポネソス戦争アテネとスパルタの二大ポリスによる戦争だが、この戦争の初期段階でペリクレスは病死してしまう。

ペリクレス時代が終わった後、アテネデマゴーグ時代に突入する。そこで頭角を現したのがアルキビアデス。弁舌も戦闘もできるというスーパーマンだったというが、アルキビアデスはその能力を発揮することなく幾度も途中で頓挫させられる。衆愚政治とはちょっとしたことで足の引っ張り合いを繰り返すのだ。ペロポネソス戦争の後半でアテネシチリアへ遠征にいくが数万人規模で兵を失う無残な結果に終わる。そこから一度は盛り返すが最後にはスパルタに敗れて覇権を失う。アルキビアデスは、シチリア遠征の時にアテネから罪を着せられアテネから抜けてスパルタへ、そしてその後ペルシアに行った末にアテネに戻る。しかし十分な活躍ができないまま暗殺されてしまう。

第I巻で見た希望あふれる民主政治から、時折現れるカリスマによりリードされる国家から一転、カリスマ不在となった国は迷走していく様が良く描かれている。一旦衆愚が世論を席巻してしまえば冷静な判断は誰にもできなくなるのかもしれない。本巻では描かれていないがこの後アテネソクラテスという偉大な思想家をしに追いやっていくことになる。

 

 

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

ギリシア人の物語I 民主政のはじまり

 

 

 

ゲノム編集とは何か 「DNAのメス」クリスパーの衝撃(小林雅一)

 

 ゲノム編集の衝撃はCRISPER-CAS9という2010年代になり世の中に出てきた最新のゲノム編集技術を解説した本である。
CRISPERという遺伝子自体は日本人が見つけたものだった。1990年前後の頃であったが、その遺伝子が脚光をあびるまでには約20年もの年月が必要だった。2010年代になり、ダウドナ、シャルパンティエ、チャン氏ら、アメリカの研究者により相次いで報告された。この技術はそれまで不可能だったほぼ100%に近い精度で特定の遺伝子の特定の配列の場所を組み替えることができる。
初期の遺伝子改変の技術は精度が非常に悪く、ノックアウトマウスという特定の遺伝子の働きを止めたマウスを作り出すのに半年から一年はかかっていた。2つある相同染色体のうちの片方の遺伝子に遺伝子改変を起こすのだけでも大変なのに加えて、2つともの遺伝子で遺伝子改変を行うためにはマウスの交配という手順まで踏まなくてはならないためだ。
しかし、CRISPER-CAS9による遺伝子編集は精度・正確性が高く、現在ではほぼ100%遺伝子を作り変えることができ、ノックアウトマウス作成にかかる時間はマウスを育てる時間にほぼ等しいたった2週間程度となる。おまけに技術としては習得は容易い。
非常に高精度で遺伝子編集が行われることができるようになり、その応用には夢が広がっている。医療の世界では遺伝子変異から発症する病気の治療や、そもそも子供の遺伝子編集を行うことで生まれる前に遺伝子編集を行うことも可能になるかもしれない。作物の遺伝子編集をおこなったりもできるし、応用は限りない。そうした研究への倫理的な枠組みの作成が急務として求められている。また、この新しい技術は非常に将来性を期待されており、開発者達(とその所属機関)はその特許を巡って争いを続けている。そして開発者達が携わるスタートアップは巨額の資金が大企業から流れており、産業へ流用しようとする動きも顕著。
科学者コミュニティの中では有名な技術で、今、AI、ブロックチェーンと並んで注目を浴びている分野だ。

 

インターネットの次に来るもの(ケヴィン・ケリー)

 

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

 

1. BECOMING
2. COGNIFYING
3. FLOWING
4. SCREENING
5. ACCESSING
6. SHARING
7. FILTERING
8. REMIXING
9. INTERACTING
10. TRACKING
11. QUESTIONING
12. BEGINNING

人類がインターネットを発明した時、当初はニッチなシステムであり、あまり見向きもされていなかった。ごく一部の人だけがその真の価値を見出してインターネットを成長させ始めた。今ではインターネットは世界の何十億人にも行き渡り生活の隅々にまで行き渡っている。中国の水道が通っていないような地域でも人々はスマホを片手に生活を送っている。テクノロジーは世界を変えたし、今後もおそらくそうなるだろう。本書はインターネットの普及時代の次に世の中にもたらされるテクノロジー革命を展望する。
読んでいる最中に故Steve Jobs氏が1995年ごろにインターネットの未来を興奮気味に語る動画がTwitterでシェアされているのを見た。彼はインターネットが世界を変えることを知っていた。インターネットが個人に浸透し、コミュニケーションのあり方や購買行動を変えることを。そして実際にSteve Jobsは思い描いた未来を実現するかのように世界にスマートフォンを爆発的に普及させて旅立った。今、勃興しつつあるAIやVR、ブロックチェーンのような技術は世界を変える大きな期待を背負っている。本書は既存の技術がどのようなレベルにまできているのかをよく解説する。そして未来の技術についても。未来の描き方は技術ベースの基礎的な話が多くやや抽象的だ。しかし、今ある技術が発達することで今後訪れるであろう未来への夢は広がる。本書で最もフォーカスが当たっているのはビッグデータだろう。ビッグデータは多くの人が取り組む課題ではあるがまだまだどのように世の中を変えていくのか姿を見せていない(ように見える)本書のような刺激から実際に世の中をかえるサービスが生まれていくことに期待したい。実際の未来は本書の内容からも想像もつかないものが訪れるのかもしれない。

映画「スティーブ・ジョブズ 1995~失われたインタビュー~ 」特別映像 - YouTube

 

COGNIFYING
現存するAIやロボットはおそらくこれからどんどんと賢くなっていくだろう。AIは人間の仕事をかわりにやってくれるようになり、人間はそのAIが代わった仕事に応じて新たな仕事を始めるようになる。現在の単純作業しかできないロボットも将来的にはもっとスマートなものに変化していくだろう。

FLOWING
デジタルの世界で最も変化したのはコピーが容易になったことだ。工業時代ではコピー品(大量生産品)を手に入れることがステータスだった。しかし、デジタル世界のコピーは最も簡単にできてしまう。つまりコピー自体には価値がほとんどない。今のインターネットのサイトが生み出している価値の多くはそこに対して付随するコメントやリンクなどの有用な情報であり、今後主流になるのはコピーされたもののパーソナライズになる。ユーザーに合わせて文章やメディアが形を変えるようになる。紙の時代の特色であった固定化は、デジタルの世界になればもっと流動的なものになっていく。

SCREENING
スクリーンは今は年に1つずつ全世界の人々に行き渡るようなペースで生産されている。スクリーンは家に溢れているが、それらはさまざまな機能をもちより生活に密着したものになる。おそらく将来は朝起きてから夜寝るまで、もしかすると夜に寝ている間すらもスクリーンの助けをかりながら生活する時代が来るかもしれない。

ACCESSING
人類が生み出すプロダクトはこれまで素材の改良などにより改善された。小型、持ち運びができる目的で改良は行われていた。しかし現代の改良は非物質化が進んでいる。デザイン、プロセスなど手に触れられないものが発展している。クラウドブロックチェーンは特に目覚ましい。

SHARING
カスタマーが参加してコンテンツを生み出すサービスは近年になり始めて登場した。資金調達さえクラウドファンディングという新しい携帯が出てきている。新しいサービスは昔には思いつきもしなかったものだ。30年後に台頭しているサービスも今の私たちには思いもよらないものであると思われる。

FILTERING
我々は大量のデータの海の中にいる。この海を全て見渡す事は不可能だ。必然的にフィルターが必要になる。SNSでは友人のシェアがフィルターの役割を果たしている。こうしてアテンションが集まる事は金銭的な価値にもつながる。モノの価値は下がり続けるが、人間の経験の価値のコストは唯一増加している。


REMIXING
持続的な経済成長は全く新しいものからではなく、既存の資源の再編成により生み出されるものだ。

INTERACTING
VRやARは非日常的な体験をもたらしてくれる。これらはパソコンに次ぐ破壊的変化をもたらすプラットフォームになりうる。VRやARは職業訓練などにも使用しうる。

TRACKING
何かをモニターし記録するという行為によりデータはどんどんと増殖する。そしてそのデータから生まれたデータも世の中に産み落とされる。あらゆるものをトラッキングしたデータから得られる知見は世の中にインパクトを与えるだろう。しかし、その中でも匿名性の問題がある。

QUESTIONING
グーグル検索は劇的に調べ物を容易にした。人々は1回の検索行動により従来よりも何分間時間を節約することができる。一日にどれほど多くの検索が行われているかを考えると、その経済的効果は絶大だ。グーグルは検索自体からではなく、広告から収入をえており、検索自体は無料でできる。一方で質問を生み出していく事は答えることよりも難しい。

BEGINNING
世の中のデータは複雑になり続け、人工知能は発達し続ける。今後シンギュラリティと呼ばれる状態が到来する日も近いだろう。シンギュラリティに悲観的な想定もある。AIが人間を支配するというものだ。しかし実際に起こるのはAIと人間が相互依存へ向かうような弱いシンギュラリティなのだろう。

 

さよならの先(志村季世恵)

 

 

さよならの先 (講談社文庫)

さよならの先 (講談社文庫)

 

 

 

ダイアログ・イン・ザ・ダークというイベントを開いていることで有名な方の本。全盲の患者の世界を体験するというダイアログ・イン・ザ・ダークの活動の話は最終章で少し紹介されるくらいで、本書はセラピストとしての活動の中で終末期の患者とどのように向き合ってきたのかという話。

志村さんはもともと旦那さんと二人で薬局の仕事とセラピストとしての活動をしてきたという。旦那さんとが2007年に急逝されたその前後の頃にセラピストとして出会った何人かの終末期の方々の話が紹介される。

 

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多くは比較的若い段階でがんに罹患、治療を行う中病状は悪くなり、生への絶望に苦しむ中で志村さんをしり、助けをもとめて知り合っている。自閉症の子供が社会へ出ることへの支援などもされていたようだ。医療を提供するという活動の中で医師ができることの中で中心にあるのは疾患の治療であると思う。しかし、現代の医療はそれだけでは完結しない。志村さんのような精神面のケアをする方は医療現場に欠かせないものになっており、診断の衝撃や、治療への不安、うまくいかない時の心のケアに大きな役割を持つ。

治らない病気や、がんの末期になった時にどうやってその事実を受け入れていくのかというのは人により本当に異なっている。自閉症の子供には時間をかけて両親が受け入れられるようにして、子供はその能力の範囲の中で生きる道を見つけてもらう。がんの末期の方々には必要な支援がなんなのか、それぞれ個別に考えて支援をする。その人の生活の中に出会ったばかりのセラピストが入り込んで全人的な支援を行うというのは「これが本当に仕事になるの!?」というようなものも多い。ほぼ自発的な優しさからこういった支援をされているのだと思った。実際の医療現場や患者の中にも家族がいない人や身寄りがない人は多く、そういった人が最期を迎えるにあたり、非常に不幸な気持ちのまま過ごすということが多いように思う。人の関わりとか生きがいとか、そういった事は医療行為として値段に算定できないものではあるけれど患者にとっては金銭に変えられない大きな価値になるものなのだと思う。

筆者は一人一人に寄り添い、その時にどう考えたか、ということをありありと描くが、一般論を語る事は少ない。身近な人が終末期を迎えた時、本書の読者が本書のことを心の片隅い思い出しその時毎に優しく手をそえてあげられるようになれば、と思う。